『魔法少女七周忌♡うるかリユニオン』
去年末くらいに書いた百合ラノベ 『魔法少女七周忌♡うるかリユニオン』のあとがき記事です。
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七年前の夏休み、語世麗華は魔法少女の小学生だった。
魔法の妖精から力を受け取り、変身してステッキで戦い、悪の組織を壊滅させ、山麓の地方都市を守った。
それきり世界から魔法は消えて、魔法の夏は終わったはずだった。しかしそれから七年経って、再び町に魔獣が現れる。
高校生になった麗華はかつて敵幹部だった芽愛と再会し、不完全に復活した魔法の力で魔獣を撃退する。
芽愛と協力して魔獣退治に奔走するうち、元魔法少女や元敵幹部も次々に集まってくる。七年経ってすっかり色々拗らせてしまったかつての関係者たち。
ロリコンお姉さん、炎上Youtuber、不人気アイドル、年齢不詳の不良ぼっち。かつての敵と味方が入り乱れ、不穏な魔法が渦巻く町を駆け回る。
今年の騒動はいったい誰が何のために? 七年前に積み残した秘密と恋心の行方は?セピア色に染まった魔法の夏がもう一度始まる。
みたいな「元魔法少女と元敵幹部が再会するガールミーツガール」です。
今までもラノベを書くたびにその解説記事を書いていたのですが、うるユニは一般論として言いたいことがあんまりありません。せいぜい作業内容と反省会を書くくらいで、いつもより素人のあとがきっぽいな~~と思ったので記事タイトルも「解説」ではなく「あとがき」にしました。
今回も精鋭の読者たちにアンケートを記入してもらったり読者会に参加してもらったりしたのでPDCAに活かしていきます。ありがとうございました。
以下ネタバレが無限に含まれます。可能なら先に本編を読んでほしいですが、どうしても読む気が起きない場合は読まなくてもよいです。
作業内容
経緯
『うるユニ』はもともとリアルで7年前くらいに書いたラノベ『マジカルガールズアフターアフター(マジタタ)』(未公開)をリメイクしたもの。
当初は『マジタタ』をちょっと直せばすぐ書き終わるだろと思っていたのだが、今『マジタタ』を読み返したらあまりにもおもんなさすぎたので99%を改めて書き直す羽目になった(面白くないと気付けること自体は大きな成長なので嬉しい)。「元魔法少女と元敵幹部が再会するガールミーツガール」という大きなコンセプトは悪くなくそのまま温存したものの、コンセプトを実現するキャラや設定や展開が悪い。その辺を再編成するとなると結局文章も全部書き直すことになる。
そんな経緯なため誰も知らない自作の話をせざるを得ないのがなんか相当アレだが、仕方ないのでその過程を書く。
補足535:読者会をやったときに「この感じの自分語りって(ファンはいいけどファンじゃない人から見たら)痛くない?」と言われたことを気にしている!
参考文献
再設計に際して、以前このブログで扱った『物語のひねり方』というハウツー本を大いに参考にした。
saize-lw.hatenablog.com詳細は上記の記事で書いたが、改めて言えば、この書籍の説明が優れる点は「描写」と「物語」を一気通貫に繋げているところ。
通常は「地の文や会話で個別の描写を行うスキル」と「物語全体のプロットを設計するスキル」は別個に考えられていることが多いが、この本では「内面の描写によって認識の相違が示される→認識の相違によって対立が発生する→対立によって物語が展開する」という順序で描写から物語までが論理的に繋がっている。
このやり方が唯一絶対の正解とまでは思っていないにせよ、対立を重視する思想が『マジタタ』の方向性とたまたま合致していたのでそのまま使わせてもらった。
勢力図作り直し
上記を踏まえつつ、元の『マジタタ』から面白くない点を削りつつ面白い点を足して構造を組み直す(以下、読者会用に作ったスライドを添付)。
叩き台になる『マジタタ』時点での旧勢力図はこんな感じ。

魔法少女が五人と敵幹部が三人いて、魔法の騒動に対して肯定的な「騒乱組」と否定的な「秩序組」、そしてどちらにも属さない「傍観組」の三派閥に分かれている。
まず全体的に設定が多すぎるのでガッと削る。

魔法少女の固有魔法は全て不要。魔法少女5人が「七年前に使っていた旧魔法」と「現在使える新魔法」の2種類を持つので5×2=10個もの魔法が存在しているが、今回のコンセプトは能力バトルではなくガールミーツガールなので能力要素は最低限でよい。敵側の固有能力も全部削る、ただし敵幹部が操るロボットだけは魔法少女が握るステッキと対になるメイン戦力なので必須として残した。
あとキャラクター自体も削る。魔法少女が秩序組と騒乱組に二人ずついるが、役割が被っていて過剰なのでそれぞれ一人に圧縮する。読者の認知負荷は可能な限り削りたいので一つで済む要素は二つ入れなくていい。妖精も二匹から一匹に減らすが、敵幹部はそれぞれ役回りが違うので全員残した。
次に勢力を再編する。先に挙げた参考文献に従えば、勢力の配置は「内面的な認識の相違によって物語的な対立が生まれる」という構造にスムーズに従っていることが望ましい。つまり物語上で対立がキーエンジンになるのだが、このとき最も対立すべきなのは明らかに主人公とヒロインだ。この話がガールミーツガールである以上、最重要人物である主人公とヒロインは対立構造の中核にいるべきである。
しかし『マジタタ』時点の勢力図では、せっかく対立構造が存在しているにも関わらず何故か主人公とヒロインは対立に関与せず傍観しているという意味不明な立ち位置になっていた。よって傍観組を削除して、主人公の元魔法少女・麗華を騒乱組に、ヒロインの元敵幹部・芽愛を秩序組に割り振り直す。これで正義と悪の立場が逆転する意外性も出る。

当初は「魔法少女内での内輪揉め」という色が濃かったが、魔法少女と敵幹部が入れ替わって逆の立場で戦争するような構図に落ち着いた。
また、主人公とヒロインを最大限に対立させるためにはどちらかが全ての元凶であるくらいが望ましい。よって騒動の黒幕を他の魔法少女から主人公に変更した(麗華は主人公兼黒幕ということでいわゆる信頼できない語り手になってもらう)。
これで前半戦はキャラクター紹介を兼ねて黒幕探し、折り返し地点で主人公が黒幕であることが発覚、後半戦は真相を受けての全面戦争というストーリーがはっきりしてくる。
反省会
キャラなどの諸要素について、主にアンケートと読者会の内容を踏まえた事後的な所見を主に書く。
途中で離脱した人はそもそも意見を寄せないので完読する程度には肯定的な方向にバイアスがかかっているのだが、そうは言っても手元の意見で検討するしかないのでこのまま進めていく。
キャラについて
期待した役割、配置の意図、読者からの反応、改善案など。
麗華

ガールミーツガールの主人公側、あと黒幕にして騒乱サイドの代表。
いわゆる信頼できない語り手の主人公であり、騒動の真相を全て把握した上で秘匿していたことが後から判明する。黒幕が判明したときに「全く新しい裏の性格を提示して実質的な新キャラになる」というパターンもよくあるが、麗華は全く動じないタイプの黒幕。「あまりにも意志が強すぎて何があってもブレない(黒幕だとバレることすら本質的な問題に数えない)」というだけで、飄々とした完璧キャラみたいな顔をしている癖によく見ると色々ミスりまくってヒロインともすれ違い続けている。
こういうキャラクター造形を「オリチャー爆走女」「初恋だけが弱点の女」ときっちり捉えている読者がいる一方、振る舞いが理解し難かったという声も一定数ある。確かに秘密が多いので内面描写をする機会が少ないきらいはあり、具体的に言うと中盤では「黒幕であること」、終盤では「愛が重いこと」が麗華のキーファクターになっているが、この二つは物語を決定付ける意外性でもあるので事前に内面として描写することが難しい。不器用さについては読者側で行動から汲み取ってもらうしかない。
自省しにくい性質まで含めて一貫性があるキャラなので弱気な内面を描写したくはないが、一応序盤の芽愛との問答で言葉選びを誤って「失敗しちゃったな、言い方」と独り言ちたりLINEの文面を迷ったりはしている(恋する乙女要素)。
また、あまり意図して書いたものではないが「プロローグでの小学生時代の言動が七年後の性格を示唆している」という意見があってなるほどと思った。
プロローグでの麗華は明らかに事前に考えてきたようなことをずっと懸命に喋っていて、意識して大人びて振る舞おうと背伸びしている様子が窺える。しっかりした顔で色々と策を弄するが実際のところそれほど上手くいっていない様子は現代編でも一貫していて、表面的なキャラが変わっても根底の行動原理はあまり変わっていないのかもしれない。
芽愛

ガーツミーツガールのヒロイン側、あと秩序サイドの代表。
主人公と対立する立ち位置ではあるが、騒乱サイドの主人公は一定の悪性を伴って気ままに振る舞えるのに対し、秩序サイドのヒロインは人格が倫理的でなければならないために面白いことがやりにくい問題がある。
これをクリアするために「七年前は悪かったけど今は改心している」というギャップに焦点を当てることになった。その方針のために二話に渡る回想が挿入されたり容姿の凍結が謎として長く提示されたりする。
また、本性は善人寄りだが敵幹部出身ではあるので「たまたま星の巡りが悪くて敵幹部やってた」という理由を与えなければならない。悲しい過去を与えるにあたってヴィランっぽくなりすぎないように配慮していた(「両親に虐待されていた」みたいなエピソードを与えたくない)。
単にキャラが安っぽく見えるし、「世界に復讐する」みたいな悪としての一貫性が出てきてしまうと初恋くらいでいきなり心変わりするのも説得力がない。悪から善への転換は芽愛というキャラの本線ではない。可哀想なキャラが救済される話はガールミーツガールともズレてしまう。
ヒロインにしてはキャラが薄いかもと懸念していたが、肉体的にも精神的にも大きく変化したことで主人公的な成長を担った枠として認識されていた(麗華はあまり成長していないので)。特に劣化破産魔法を解いた大人形態の活躍ぶりは好評で、魔法少女・麗華を素手で制圧するシーンは人気が高い。
ちなみにアウトローな民間警備会社というややフィクショナルな仕事をしているのは色々な要請が折り合う職業がそれしかなかったため。魔法少女に憧れて戦闘能力を極めているので治安維持系の仕事に就いているはずなのだが、かといって警官や自衛官にするわけにもいかない。職業意識の高い公職なら私事を優先してずっと欠勤しているのは不自然だし、魔法の騒動が生じた時点でまず公的な手続きによる解決を考えるはずだからだ(プライベートで解決しようとしないはず)。
なので「私的に治安維持するアウトロー」という訳の分からないジョブを探すことになり、「ナイトクラブのセキュリティの上位版みたいなやつ」に落ち着いた。読者が言っていた「こいつ嘘喰いの立会人じゃん」という感想は正しくて俺もそう思っている。
総じて予想以上に人気のあるキャラクターだったが、反省点としてシルバーアクセサリ要素をもっと強調したりキャラ造形に組み入れたりしても良かった。
「登場期間が長い割には七年後の姿を正当化する描写が直前の回想くらいなのでやや唐突な印象を受ける」という意見があったが、一応アウトロー要素の伏線として配していたのが大量のシルバーアクセサリだった。しかしこれは漫画ではないので登場シーンでずっとジャラジャラさせている様子は逐一描写しなければ伝わらない。「いかついアクセサリにかなりこだわりがあって(女子高生の)年齢不相応に詳しい」とか「Nマートで高額な金属ジッポライターを買い集めて周りに引かれる」みたいな要素があっても良かった。
綺羅

主人公の親友枠で賑やかし要員の騒乱組。
「初登場時は勢い重視のバカキャラっぽいが、実際にはかなり大人だし視野も広い」「一見すると迷惑タイプのヴィランっぽいが、彼女なりに社会を思いやっている」というギャップのある性格はヘイト管理の都合で強く想定したもの。
基本的に騒乱組は町に迷惑をかけるグループで、特に麗華の「初恋の相手と再会するために町一つを危険に巻き込む」という挙動は冷静に考えると自分勝手すぎる問題がある。そこで「騒乱組にも騒乱組なりの意義と正しさがある」と正当化してヘイトを引き受けて処理するためのタンクとして綺羅が配置されている。
ただ最終的には麗華が敵対的かつ秘密裏に棄却する形で綺羅の物語は強制終了したため、ブツ切りになった印象を受けている人は多い。
一応それはコンセプト通りなので修正する選択肢はあまりない。あくまでもメインは麗華と芽愛のガールミーツガールで、魔法に係る善悪という軸で展開する綺羅と御息の対立はサブのラインに過ぎない。むしろ麗華が他の一切をなぎ倒して初恋を取ることを強調するための踏み台であり、実際プロローグとエピローグは明確に魔法少女の話ではなくラブコメの話になっている(麗華自身もそう言っている)。
とはいえキャラがおざなりになった印象を与えているのは良い状態ではないので、綺羅にも一定の落としどころを与えられた可能性はある。御息は綺羅よりはまだ納得がいく末路に至ったと認識されているようではあり、そのあたりにヒントがあるかもしれない(後述)。
ちなみに一番個人的な性癖が出ているキャラでもある。自分が女子高生だったときの親友の理想形。
麗華と二人で泊まってワチャワチャしているシーンは個人的にはかなりお気に入りだが、あまり人気がないしそもそもキャラ人気もそれほど高くない(即決で裏切って麗華に味方するシーンは人気だが、キャラ要素というよりは展開の意外性という文脈)。
なんかこう、エロゲーによくいる親友イケメン枠に落ち着いてしまったのではないかという疑惑がある(あの手のキャラは面白くない)。綺羅は基本的に有能で頭も身体も切れるが、それだけに人間臭さを見せていた御息に比べるとポジティブ方面に振れすぎていたきらいがある。もう少し意外な弱みがあっても良かったという説はあるが、そうは言っても「オモロキャラと見せかけて割と大人」というところでもう既にギャップがあるのでなかなか難しいところ。
御息

ヒロインの親友枠でシリアス要員の秩序組。
造形の前提として、秩序組というポジションの時点で芽愛と同様の課題を抱えている。つまり「街の平和を守りたい」という安直なモチベーションに面白味がない上、御息はもともと魔法少女なので芽愛と違って意外性もない。
よってキャラを立てるためには「正義が暴走しがち」という尖ったパーソナリティで補う必要があり、友人を告発した回想エピソード、コンビニでチンピラをしばくシーン、魔神機デモンアウェークの造形あたりはそういう要請に由来している。
また、日常の中でも不穏な雰囲気を出しやすいキャラとして物語をシリアス方面に動かしていく役割も担っている。例えば中盤で麗華が黒幕であることを明かすとき、皆で仲良く魔獣退治をしていたところでいきなり裏切るのも変なので、「ちょっと空気悪くなってきたな」という雰囲気の伏線を引いておきたい。ただ麗華自身から不穏な空気を出すのはネタバレになってしまうので不可、代わりに御息と綺羅がコンビニで喧嘩するシーンがその仕事をこなしている。
面白みのないキャラのような気もしていたが、意外にも綺羅よりはちょっと人気がある(めちゃめちゃ御息ファンの読者がいる)。
特に異形の魔神機デモンアウェークは作品のトーンから一段浮いたところで御息の異常性が収束したモチーフとして評判が良く、それが御息の物語に終止符を打っているという見方もある。つまり(一般モンスターでしかない綺羅のゴーレムと違って)グロテスクな造形のデモンアウェークは御息の正義がもう破綻していることを示しており、(終始冷静に振る舞っていて得るものがなかった綺羅に比べて)御息はもうどうしようもないという結論に達していた、のかもしれない。
ちなみにデモンアウェークは『マジタタ』の残滓だが、修正しないことで消極的に残したという言い方をしてもいい。
緑山
ここから先は男性陣なのでキャラクターシートがない。
ずっと主張していた「ネームドキャラは美少女しか出さない」という誓約を破って初めてネームド男性キャラが投入された(殺されるだけの雑魚モブ男なら今までにも何人か出ている)。今回は悪の組織に女幹部が何人もいるのは不自然だし、紅一点でなければ芽愛のキャラもよくわからなくなってしまうため。
ただ全体的に男性陣の評判は想定よりも遥かに良かった。特に緑山は美少女キャラより高く評価する人も少なくなく、評価していなくても「美少女の姿をしていれば一番好きだったかも」と語る読者もいる。
人気の理由は立ち位置の良さにある。依然として話の本筋は美少女たちなので男連中は補助でしかないのだが、そのために却って絶妙なタイミングで現れて必要な仕事をしたり背景を提供したりと痒いところに手を伸ばしてストーリーを進める立ち回りになっている。
特に綺羅や御息のような美少女サイドのサブキャラが高い期待の割には若干消化不良のまま終わったのに対して、過不足なく活躍した男たちの評価が相対的に上がった形になっている。
ただ、これは緑山に限ったことでもないのだが、あくまでも美少女ラノベであるために男性キャラはいわゆる「去勢済み」にならざるを得ないという限界はある。
補足536:ポップ批評用語としての去勢。
つまり表面的にはアウトローだったとしても、実際には物分かりがよく暴力に訴えず美少女たちへの下心を微塵も感じさせないようなキャラでなければならない。緑山は設定的にはどう考えても金・暴力・セックスに親しんでいるのだが、少なくとも『うるユニ』という物語にはそういう手段で介入しないという一線がある。性格最悪でも構わない美少女キャラに比べると、男性キャラの描像は制約が大きいことを痛感した。
補足537:設定的には緑山はその辺の成人男性にはまず負けないが、大人芽愛には瞬殺される(大人芽愛が強すぎる)。
特に緑山と芽愛の恋愛フラグを絶対に立てないために挿入した「俺はゲイだからな」というセリフはやや安直で下品なやり方ではあって諸説だが、シーンのオチとして機能していたので別に問題ないという声もある。
黒壱
男性キャラその二、悪のボスをやっていた善人。
『マジタタ』の頃は改心したオッサンでしかなかったが、それだと芽愛とキャラが被ってしまうので異世界出身とかメルリンとの友情とかのバックストーリーが諸々足された。ちなみに黒壱とメルリンの話は時系列的には全ての始まりだが、書き進めている時点では「まあ後でどうにかなるだろ」と思って全然考えていなかった。病院のシーンを書く段階になって初めて生えてきた後付けの設定ではある。
登場シーンが多くないし還暦超えのジジイなのでキャラ自体の人気はそれほどないが、七年前の真相も含めてネガティブな声はほとんどない。
特に「黒壱が御息に魔神機を譲渡するシーンで秩序組が結託するラインの奥行が見えて良かった」という声があった。黒壱は緑山と違って七年間ずっと星桜市で過ごしていたわけで、経緯と性格からしてメルリンから託された魔法少女たちの行く末を見守っていたことは間違いない(それは店長としての麗華との会話からも窺える)。そんな中で御息には魔神機の適性があることを見抜いていた背後には七年間の積み重ねが窺える……とまではあまり考えていなかったが、読みとして美味しいのでそういうことにしておきたい。
補足538:黒壱はゲーマゲでは彼方に適当に殺されて魔神機を奪われていたが、実はうるユニでめちゃめちゃ善人であることが判明したので胸糞すぎね?という意見があって確かにと思った。完結してからもヘイトを稼ぎ続ける女……
メルリン
男性キャラその三、故人のマスコット妖精。
マスコット妖精は「いわゆる魔法少女もの」の建付けを守るために必須。当初は「魔力の源泉」くらいにしか考えていなかったが、黒幕探しのキーファクターになったり、黒壱とのラインが足されて全ての原因になったり、最終的には食材になったりと気付けば舞台装置として八面六臂の活躍をしていた。
概ね故人なのでキャラ自体の人気はどうというものでもないが、黒壱とのシニアコンビと回想エピソードの評判は悪くない(BL需要あり)。
プロットについて
大枠としては概ね問題なかった。論理的な違和感もなく、やりたかった話が汲み取られている。
思ったより良かったことを二点と、改善の余地があることを一点挙げる。
良かったこと
一点目は導入プロローグの評判が特に悪くなかったこと。
『うるユニ』に限らず今までずっと気にしていた問題として「素人小説は一話のインパクトを最大にしなければならない」ということがある。もし西尾維新なら蓄積された信頼があるので一話がどんなにつまらなくても面白くなるまで耐えて読み進めてくれるのだが、俺は西尾維新ではないので一話で刺せなければ離脱されてしまう可能性が極めて高い。よって一話に限っては受けの広さよりも爪痕の深さを優先すべきであり、今までもインパクト優先で虫食や自殺や自殺を冒頭に持ってきていた。
ただ一話で残す爪痕のインパクトを最優先にしていると、書けるジャンルがかなり制約されてしまうしワンパターンになってしまうというジレンマもある。よって『うるユニ』では意識的に少しガードを下げて相対的に薄味なおねロリエピソードから始めており、これが甘えなのか機能するのかは大きな要監視事項だった。
正直に言えば本当に一話で離脱した人は暗数になってしまうので真相はわからないにせよ、寄せられた意見としては問題を感じた人はいなかったので一旦これで問題ないとする。爪痕までは残さなくても、一話で「結局これは何の話なのか?」というメッセージをしっかり伝えていたことが奏功したのかもしれない。プロローグを一話できっちり完結させたり、問題を整理するためにキートン山田みたいなモノローグを入れたりしているのはそういうナラティブクエスチョンを正しく提示するため。
二点目は予想を裏切るシーンがちゃんと機能していたこと。麗華の黒幕発覚、綺羅の裏切り、芽愛の復帰変身など。
予想を裏切りたいときに一番楽なのはいきなり誰かを殺すことだ。前作までは人が死んでもいいラノベだったのでその手口を多用していたが、同じことばかりしていても仕方がないので『うるユニ』では原則としてキャラを殺さない制約を課していた(メルリンは死んだけど妖精なのでセーフ)。これによって人を殺さずにどれだけ盛り上がりを作れるかが課題になっていたが、読者の反応を見る限り概ね問題なさそうだったのでヨシとする。
改善の余地があること
中盤まで(麗華が黒幕であると明かされるまで)の展開がやや緩慢で中だるみしていたこと。
ただ前提としてカタルシスを得るためのセットアップは必要なのである程度はやむを得ないと考えている(読者も多少は耐えてくれる想定)。黒幕について緑山→妖精→綺羅という三回のミスリードを経てようやく本命の麗華に到達する、肩透かしが連続する構成自体は問題ない。
ただ冗長でないに越したことはないのでもう少し削れたかもしれないという話になると、今にして思えば麗華が一人でNモールの店内を回るシーンは明確に不要だった。断絶した七年前と現在を繋げるためのノスタルジックなパート自体はどこかで必要だったのだが、麗華が一人でやる必要は全くなく、全員が合流してからの顔合わせを兼ねてゲーセンに行けばよかった。「原則としてキャラは一人にしない(内省より会話の方が面白いから)」という鉄則を忘れていた俺の完全な手落ちである。
テーマについて
読者会で「夢と現実の止揚」というラインのテーマ解釈がブロッコリーマンから提示され、俺はあんまり考えてなかったけどそれはかなり良いからそういうことにしたいのでここに書いておく。
補足539:元文学専攻のブロッコリーマンは俺のラノベに関しても突出して有益な読みを提示することが多く(にはりがでも良い読みしてた)、アカデミックな文学技能はラノベにも通用することを確認している。
夢と現実という対立軸で見たとき、フィクショナルな魔法少女を擁立する騒乱組は夢側、逆に阻止する秩序組は現実側という対応になる。特に最後の決闘は夢を諦めずに子供の手段で戦う麗華vs現実的に事態を収拾するために大人の武力を持ち出す芽愛という構図になっている。
そのあと二人がなし崩しにくっ付く際、他の仲間たちには秘匿したまま二人だけの共犯関係を結ぶことはドライで現実的な判断だが、そうやって持ち越されるのは『妖精の魔法』という夢そのものだ。つまり夢も現実も破棄せずに「現実的に夢を温存する」という形で止揚したことになる。二人は完全に現実に帰ることも、完全に夢を取ることもなかった(『妖精の魔法』を放棄することも、魔法の国と化した星桜市を続行することもなかった)。
こういう見方をすると他の登場人物も整合したポジションを取れるようになってきて、例えば緑山はこの折り合いの付け方を先んじて提示している。緑山は既に悪の組織を卒業して現実の世界を生きる大人だが、魔神機メックホークが復活すれば乗って駆け付ける程度には夢を見たりもする。かといって夢に耽溺することもなく魔神機を操りながらも現実的なアドバイスを繰り返しており、どちらにも振り切らずに上手くバランスを取ったポジションにいる。
そして元はと言えば魔法少女の騒動を始めた黒壱は「現実的に混乱を収めるために夢を利用する(現実のために夢を使う)」という振る舞いをしていたのに対し、麗華たちは「現実的な手段を用いて夢を独占する(夢のために現実を使う)」という逆向きのやり方で魔法を簒奪した。
また、この読みだとメルリンの解体シーンが(無駄に克明だったことも込みで)作品のテーマを象徴したものとして読めるのが非常に良い。
麗華と芽愛が『妖精の魔法』を手中に収める手続きはフィクションを神秘化するのではなくむしろリアルな利害へ解体していくものだったが、これはマスコット妖精という夢の産物がグロテスクな肉塊という物理的な現実へ解体されていく様とパラレルに読める。妖精の調理を微に入り細を穿って丁寧に描くことによって、妖精の食糧化は夢の現実化を象徴できる。
その他トピックス
読者会などで出た様々なトピックについてまとめる。
魔法少女設定について
実は女児向け魔法少女アニメのモチーフを根幹に据えている割には大して見ておらず、「まあだいたいこんな感じだろ」という推測で書いていたのだが、ガチで詳しい人にはバレていた。
エアプがバレるポイントは二点あって、一つ目は魔法少女時代の麗華たちが小学生だった点。魔法少女アニメにおける魔法少女は普通は小学生ではなく中学生らしい。確かに視聴者層は女子小学生だが、女性小学生は同年代ではなく少し年上のお姉さんに憧れるのだ。
二つ目はラストバトルが山中だった点。魔法少女のラストバトルは敵の居城や謎空間が定番であり、山中とか採石場とか海辺では戦わないらしい。「それは特撮だろ」と言われたのが図星すぎた。プリキュアは見てないけど仮面ライダーはけっこう見てたのでそっちのイメージが混入してしまった。
麗華の香水について
香水についても全然詳しくないので適当に書いていたのだが、やはりガチで詳しい読者にエアプがバレてしまった。
夏は甘ったるくない匂いを選ぶところまでは正しいが、その局面で女の子が選ぶのはミントではなく柑橘系らしい(俺は男性なので夏の清涼路線だとギャツビーみたいなものしか思い浮かばないという想像力の限界が露呈)。特に麗華みたいな人だとイチジクとか使ってそうらしい。
おねロリについて
個人的には『うるユニ』は変則おねロリのつもりだったが、そう言ってる人は他に全然いなかった。
一応七歳差のカップルではあって、ロリ側の麗華が終始トップギアで凸りまくっておね側の芽愛が翻弄されているという王道シチュエーションのイメージがある。が、麗華は性格の都合で全然年下感がないし、芽愛は能力の都合で全然年上感がない。
補足540:百合は毎回絶対にやるが、同じことを繰り返しても仕方がないのでメインカップリングのテイストは可能な限り変えている。すめうじが姉妹百合、ゲーマゲが敵対百合、にはりがが友情百合、うるユニがおねロリ百合。
『破産魔法』について
『破産魔法』は記憶や事象を含めたあらゆる因果を巻き戻すので、厳密に言えば巻き戻した地点から全く同じ歴史が再展開するのではないかという声があった。
本編では二回とも不発に終わっているし正直あまり厳密に考えていないが、言われてみればそうかもしれない。ただ決定論的な世界観でなければ別に同じことが繰り返されなければならないわけでもないような気はする。
小動物について
小動物を殺すと読者からのヘイトが溜まってしまうので殺さないように頑張っていた。
特に魔獣は「その辺の小動物が魔力によって狂暴化した」という設定である以上、退治時に殺害してしまうと小動物殺害判定になって読者に怒られてしまう。だから魔獣を倒しても獣は死なずに悪いものが祓われるだけで本体の小動物は元気なまま野生に帰るみたいな描写を加えてヘイト管理している。
「怯えすぎでは?」とも言われたが、取らなくてもいいヘイトは取らないに越したことはない。
芸能関係について
芽愛が元キッズモデル、綺羅がYouTuber、御息がご当地アイドル、麗華が町の有名人と、美少女キャラクターたちが軒並み露骨に容姿が良くて目立つ属性を持っている。
これは積極的に意図したというよりは、夏休みの物語なのでキャラたちには学外で通用する属性を与えなければならなかったという設定上の要請によるもの(学年一位とか運動部所属みたいな設定があっても使えないので、学外でYoutuberとかご当地アイドルをやっていないといけない)。
とはいえやはり魔法少女(敵幹部)はモブとは対極に位置する人種ではあって、一挙一動が祝福されているタイプの人間たちというイメージはあったかもしれない。大勢の市民から視線を浴びたりしても誰も動じないのは、普段からけっこうスペシャルな扱いを受ける人々だからではある。
キャラシートの時間軸について
キャラシートで時間が右から左に流れているが、デザイン的には逆の方が望ましいのではという指摘があった。

確かに視線誘導は「上から下」「左から右」でZ型に動くのが自然とされており、デザイン本でも散々読んだはずなのにどうして逆になっているのか自分でも不思議だった。
しばらく考えてようやく理由がわかったのだが、俺はこのシートを「ラノベ冒頭のカラー挿絵」という認識で作っていたのだ。縦書きのラノベは「右から左」に捲るため、視線もそれに準ずるのが自然である。とはいえ、これはデジタル媒体だし次からは左から右にしようと思う。
描写のディテールについて
「描写からプロットまでを論理的に繋げる」などと口では言いつつも、実際のところ描写の大部分はそこまでロジカルに考えているわけではないし、特にキャラクターのディテールは「適当にこんな感じで」というライブ感で乗り切っている。
この辺も意識的にやった方がいいのか、趣味なので適当にやっていればいいのかはまだわからない。何だかんだもう50人くらいはキャラを創造しているわけでそろそろ被りが気になっていたりもするが、とりあえず一旦問題ない認識で、面白くなくなってきたとき再検討することにして保留する。
筆致について
にはりが以降は思想が強いキャラが減少傾向にあるという自覚はある。「こういうブログを書く強みと噛み合っていないのでは」という指摘も理解できるが、今のところ衒学路線に極振りするつもりはない。
基本的には衒学路線よりはエンタメ路線を志向しているし、同じことばかりやっていても仕方がない(両取りできないわけでもないのでバランスではある)。どうせ素人だし「自分の型を見つけよう(同じことばかりやっていてもOKな感じにしよう)」などと怠けようとせず、色々試せるだけ試して試行錯誤した方が得られる手札が多くなるという気持ちは強い。