キリル・セレブレンニコフ監督作『死の天使 ヨーゼフ・メンゲレ』を見た。セレブレンニコフ初のドイツ語映画で、ヨーゼフ・メンゲレに関するオリヴィエ・ゲーズの書籍の映画化だそうだ。
第二次世界大戦後、メンゲレ(アウグスト・ディール)が逃走して南米に潜伏し、かつての思想や仲間のネットワークはそのままで、表面的には社会に溶け込んで目立たないよう暮らす様子を描いている。息子とはうまくいっていなかったり、潜伏中に再婚したり、闇医療行為を行って身元がばれかけたり、ただただ静かに暮らしていただけではない。この戦後の暮らしはモノクロなのだが、フラッシュバックで描かれるナチス時代の人体実験の様子がカラーでしかもホームムービーみたいな調子で撮られており、こういう時系列や映像の実験がセレブレンニコフっぽいところではあるのだが、モノクロのシークエンスに比べるとこのカラーのシークエンスはえらくエクスプロイテーション映画っぽい。このあたりのクセの強さが監督の個性でもあり、トーンの統一性に欠けるように見えるところでもあるな…と思った。