ダーレン・アロノフスキー監督『コート・スティーリング』を見た。
舞台は1998年のニューヨークである。大きな交通事故で友達を死なせ、自分も負傷してプロの野球選手になることをあきらめたハンク(オースティン・バトラー)は酒浸り気味になりながらバーで働いていた。ところがある日、イギリス人のパンクスである隣人ラス(マット・スミス)が父親が危篤で急に里帰りすることになったのでネコのバドを預かってくれと押しつけてくる。イヤイヤながらバドを預かったハンクだが、その直後からやくざ者にボコられたり脅迫されたり、えらい目にあうことになり…
かなりテンポが良くてダークなコメディスリラーである。タイトルが『コート・スティーリング』(Caught Stealing)で「盗塁が刺される」という意味で、主人公は挫折した野球選手なので、全体に野球ネタが多く、大変アメリカっぽい作品…なのだが、途中でラスとの間にアメリカの野球とイギリスのサッカーをネタにした面白おかしいやりとりもある。途中でハンクのガールフレンドであるイヴォンヌ(ゾーイ・クラヴィッツ)が殺され、ハンクがその復讐をしようとするあたりはかなり冷蔵庫の女っぽい展開でそこは気になるのだが、この後どんどんハンクの周りの人がいきなり死にはじめてダークになるので、トーンの変わり目を示す展開としてはまあ有効ではある。
ちょっとばかり近所の人に親切にしたせいでえらいことに…というのは『シンプル・フェイバー』にそっくりな始まりで、あれの男性版というような感じもする。アメリカでは当たらなかったそうだが、スリラーとしてはかなり面白いし、役者陣の演技もよかった。最後に一瞬だけローラ・ダーンが出てくるのはビックリした。アロノフスキーの前作『ザ・ホエール』は、良いと思うところはいっぱいあったが全然好みではなかった…のだが、こちらはそれに比べるとだいぶ私の好みである。なお、事件のきっかけになったネコは最後まで無事である。