ウベルト・パゾリーニ監督The Returnを見た。
『オデュッセイア』の終盤をかなりちゃんと映画にした作品である。オデュッセウス(レイフ・ファインズ)はボロボロになってイタケに帰り着くところから始まる。ところがイタケ島はペネロペイア(ジュリエット・ビノシュ)の夫の座を狙う求婚者たちの乱暴狼藉で荒れ放題、息子テレマコス(チャーリー・プラマー)も不満を募らせていた。オデュッセウスはしばらく身を隠すが…
神様が出てこないことを除けば話じたいはけっこう忠実に『オデュッセイア』である。オデュッセウスの愛犬アルゴスが死んでしまうショッキングな展開や、乳母によるオデュッセウス発見のくだりなどもそのまんまやっているのだが、人(犬も)の心境をはっきり描写する演出でちゃんと現代人にもわかりやすいように説明をつけている。明らかにオデュッセウスがPTSDと思われる行動をとっていたり、母子関係や夫婦関係がかなり現代的かつ深刻に描かれていたり、古典の映画化としては非常にすっきりモダナイズしていてとっつきやすい人間ドラマになっているほうだと思う。求婚者たちが近隣の有力者というよりはまるでギャングかチンピラかインチキ投資家の集団みたいで、滑稽なくらい無能で暴力的なこともある一方、ペネロペイアや地元の女性及び男性にとって明らかな性的脅威として描かれているところはリアルだ。
このへんのリアリティはエドワード・ボンドが脚本にかかわっているからかな…という気もする。ギリシャやイタリアで撮影した映像もいい。全体的にレイフ・ファインズとジュリエット・ビノシュの達者な演技を見る映画ではあると思う。