以下の内容はhttps://saebou.hatenablog.com/entry/2025/12/16/002504より取得しました。


クィアの政治化、政治のクィア化、そしてキャシアン・アンドー~『蜘蛛女のキス』(ネタバレあり)

 東京国際映画祭ビル・コンドン監督『蜘蛛女のキス』を見た。マヌエル・プイグの有名な原作小説があり、一度映画化され、さらにミュージカルの舞台版もあって、今回はその映画化である。

www.youtube.com

 舞台はアルゼンチンの軍事政権末期の刑務所である。政治犯バレンティンディエゴ・ルナ)と、猥褻罪(同性間性交渉)で投獄されているモリーナ(トナティウ)は刑務所で同室になる。いかにもクィアでおしゃべりなモリーナに対して最初はバレンティンは邪険にするものの、モリーナが自分の好きな映画『蜘蛛女のキス』の話をするうちに二人はだんだん親しくなっていく。二人の想像の中でこの映画のストーリーであるアーマンド(ルナの二役)とオーロラ(ジェニファー・ロペス)のロマンスが展開する。

 話は小説や前の映画に比べるとけっこう明るい…というか、抵抗の重要性みたいなものに焦点をあてた非常にクィアな作品になっている。刑務所のつらい現実と豪華絢爛なミュージカル映画の対比がはっきりしており、希望を持つことがクィアな人間にとっても、軍事政権下で自由を求める人間にとってもいかに大事かという話になっている。けっこうはっきりクィアであることを政治化している…というか、クィアな人々の暮らしは政治的自由が保障されないと存在しえないということを描いているし、さらに真面目一辺倒であまり自分の人生と性愛について考えたことがなさそうなバレンティンモリーナを通して自分のクィアな側面、既存の男らしさにあてはまらない側面を発見し、個人の生活も政治でありうることを理解する過程を描くことで、政治をクィア化している作品でもあると思う。

 主要キャスト3人が大変良く、ミュージカルとしてかなり面白いのだが、一方でいったいこれをどうやって舞台でやるんだ…という気がするミュージカル映画でもあった。モリーナは話をしているうちにそのまんま切れ目なく映画中映画である『蜘蛛女のキス』が始まる…みたいな展開になるのだが、モリーナもヴァレンティンもこの映画中映画に出演しているので、舞台だとなかなか難しいような場面転換や衣装替えが次々起こる。映像ミュージカルとしては非常に面白いのだが、舞台でこれをやってどれくらい迫力があるのかはちょっとわからないので、舞台版を見てみたいという気になった。

 なお、余談だが、スター・ウォーズファンとしてはまるで『キャシアン・アンドー』のミュージカル版みたいな感じの話であるところも個人的に面白かった。抑圧的な体制下でディエゴ・ルナが刑務所に入っているんだからまったく『キャシアン・アンドー』そのものじゃないか!『キャシアン・アンドー』が終わってしまって寂しいので、その点でも嬉しい映画だった。

 

 




以上の内容はhttps://saebou.hatenablog.com/entry/2025/12/16/002504より取得しました。
このページはhttp://font.textar.tv/のウェブフォントを使用してます

不具合報告/要望等はこちらへお願いします。
モバイルやる夫Viewer Ver0.14