天動虫『マクベス - その名に惑わされた男 -』を見てきた。『マクベス』がベースの帆足知子による翻案である。
最近の『マクベス』はいわゆる「一卵性夫婦」的な、お互い強く愛し合っているが度外れなベタベタぶりのせいで不健康な共依存サイクルに入り込んでいるみたいなマクベス夫妻が多いものの、こちらの演出はもっと昔風な感じで、優柔不断で恐妻家のマクベス(ワダタワー)が意志の強いレディ・マクベス(平野直美)に押し切られ続けているというような内容である。戦場では勇敢なマクベスがとにかく妻にだけは頭が上がらないという様子が戯画化して描かれている。
一方でこの作品の主役はむしろマクダフ(ジョニー)かと思うくらいマクダフが活躍している。マクダフは若々しい新進気鋭の勇士で、頭もいいし人望もある。ダンカン死後に王を推挙する原作にないくだりが追加されているのだが、ここはマクダフ視点で、たぶんマクベスよりもはるかに王にふさわしいのだろうがかなり若いマクダフについて、推挙する人はいるもののマクダフ自身があまりふんぎりがつかないでいるうちに、魔女の予言を聞いていたバンクォー(藤江千晶)たちがマクベスを推挙して…という展開になる。最近のプロダクションでは腹黒いバンクォーが多いが、これもかなりそういうトレンドに寄せているなと思った。結局、マクダフも王になれないわけで、ちょっと微妙そうな終わり方になっているのだが、これは原作にもある要素…というか、マクベス打倒に一番貢献したのにマクダフは血筋のせいで王にはならないので、いったいマクダフはこの経緯をどう思っているんだろう…というのはもともとの戯曲を読んだ時も感じる疑問だと思う。そのあたりを敷衍した作品だ。