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映画をうまく舞台にしている作品~『I, Daniel Blake ―わたしは、ダニエル・ブレイク』

 『I, Daniel Blake ―わたしは、ダニエル・ブレイク』を紀伊國屋ホールで見てきた。ケン・ローチ監督の有名映画を主演のデイヴ・ジョーンズが劇化した芝居を大谷賢治郎が翻訳・演出したものである。

 話は映画にかなり忠実で、ニューカッスル・アポン・タインに住む真面目な大工ダニエル(葛西和雄)が心臓の病気で仕事を休まざるを得なくなり、お役所仕事の地獄のせいで福祉が適用されない制度の穴に落ちてしまって…という物語である。映画からの変更としては2020年代の物価高を強調している一方、舞台としてやりにくそうなところはけっこうカットされている。ケイティ(中山万紀)の万引きのくだりとか、ダニエルがトイレで発作を起こすところとかは舞台装置を変えないといけないのでカットされたり変更されたりしており、個人的にはこのあたりの場面の妙なリアリティが好きだったのでそこはちょっと残念である。

 映画は低予算のわりには街の風景などを取り込んだリアルな空気感が重要で、かなり映画の技術的な特徴を生かした映画ではあったのだが、舞台はそういう空気感については制限のあるメディアである。この舞台では滑り台みたいなゆるやかなスロープの装置に家具があるセットを使い、ちょっと道具を動かす程度でいろいろな場所を表現していて、なかなかうまくやっていると思った。また、プロジェクションが重要な役割を果たしており、要所要所でイギリス(主に保守党)の政治家の貧困層に対する甚だしい無理解を示すような発言とか、それに対するケン・ローチ監督の批判などの言葉が映し出され、いかにイギリス政府がダニエルやケイティのような人たちを制度的に虐待しているかが手厳しく批判されている。山場のひとつといえるダニエルの落書きによる抗議場面はこのプロジェクションを使って盛り上げている。全体的に気の滅入る話ではあるが、舞台としてはけっこう見応えがあり、また今でこそ必要な作品だと思うので、長く再演されてほしいと思った。

 なお、ケン・ローチ監督は最近The Old Oakという映画をとっており、この後はもう劇場用の長編劇映画は撮らないとか言っているという話もあるので、早く日本公開してほしいのだがあまり話が聞こえてこない。早く公開してほしい。

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