マデリーン・シャラフィアン、ドミー・シー、エイドリアン・モリーナ監督のピクサーアニメ『星つなぎのエリオ』を試写で見た。
両親を亡くした11歳の少年エリオ(ヨナス・キブレアブ)は、空軍のスペースデブリ関係の部署で働いている叔母オルガ(ゾーイ・サルダナ)に引き取られる。孤児となり、空軍基地で友達もおらず、叔母は自分のために宇宙飛行士のキャリアを諦める予定だということも聞いたエリオはすっかり自分の殻に閉じこもり、無線機で宇宙人とコンタクトして宇宙に連れ去ってもらうことを夢見るようになる。ところがなんとエリオは宇宙人と接触することができ、かねてから希望していた宇宙の世界に飛び出せた上、地球の大使と勘違いされてしまう。
子ども向けのSFアニメではあるのだが、設定はジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの「男たちの知らない女」とかカルトクィアSF『リキッドスカイ』みたいなシビアなもので、とくに序盤は地球で自分の居場所がなさすぎると感じた人が宇宙に連れて行ってもらうことを望むという孤独感がひしひしと伝わってくるような展開である。一方、宇宙に飛び出してからはキラキラしたコミュバースがまったくSF好きの子どもの夢みたいな世界で、華やかなテクノユートピアとして提示されている。そこでエリオがひょんなことから出会った相手グロードン(レミー・エジャリー)と友達になるのだが、厳しい父親に自分の気持ちを打ち明けられずにやはり孤独を感じているグロードンとエリオが親友になる。こうしたいろいろなトラブルを通して子どもたちも成長するのだが、大人たちも成長することになり、グロードンの父グライゴン(ブラッド・ギャレット)はいわゆる有害な男性性的なものや好戦的で抑圧的な自分の故郷の文化から脱して息子と向き合えるようになるし、オルガは念願の宇宙飛行を体験する。さまざまな観点から子どもと大人の人間関係の問題とそれに対する救いをユーモアをまじえてやさしく、鮮やかに描いた作品である。
さらにこの作品では終盤でアマチュア無線愛好家が大活躍する。スペースデブリ専門家のメルマック(ブレンダン・ハント)や、最初にエリオにえらい迷惑をかけられた結果、エリオいじめに加わることになった無線好き少年ブライス(ディラン・ギルマー)など、序盤であまりいい目をみなかったキャラが最後に登場し、世界のアマチュア無線コミュニティが大活躍することにつながる。アマチュアのファン活動というのは最近ではげんなりするような話ばかりだが、この作品は何かが好きな人たちが善意で集まればデカい善行ができる!ということを臆面も無く主張しており、とても明るく終わるのが良い。