三谷幸喜の翻案・演出による『昭和から騒ぎ』を見てきた。シェイクスピアの『から騒ぎ』にけっこうちゃんと沿っているのだが、第二次世界大戦後の鎌倉が舞台で、旅役者の一団が鎌倉の鳴門教授(高橋克実)の家にやってくるという設定になっている。ドン・ペドロにあたるキャラがなく、地元の警官である毒淵(山崎一)がドグベリーとドン・ペドロとボラチオなどの役を兼ねるという変わった作りになっている。
この毒淵がひとりでいろんな役を兼ねているせいで、まあけっこうめちゃくちゃな笑劇になっている。他人の人生に首を突っ込むのが大好きな毒淵が、頼られると後のことを何も考えずに変な作戦を思いついて提供するせいで、毒淵がクローディオにあたる定九郎(竜星涼)とヒーローにあたるひろこ(松本穂香)を縁結びしたかと思ったら嘘つきのどん平(松島庄汰)に騙されて今度はその仲を裂く策略を考えるなど、まったく分別のないけっこうやばい人になっている。もとの芝居には存在した軍人の帰還とか階級の問題みたいな社会的要素がなくなっており、戦後民主主義的なノリで教授は娘が旅役者と結婚することに何の問題も感じていないし、だいぶ脳天気で気持ちいい笑いにフォーカスした内容になっている。毒淵の変な活躍もあって、全体がロマンティックコメディというよりは恋愛がテーマの面白おかしい軽いドタバタ笑劇という感じだ。あまりにも笑えるところが多いので、途中で教授役の高橋克実が耐えかねて自分も笑ってしまっていた。
とはいえ本作はやはりスターの芝居…というか、主演ふたりのやりとりが醸し出す笑いが魅力である。ビアトリスにあたるびわこ(宮沢りえ)は相変わらずえらい綺麗だし、ベネディックにあたる木偶太郎(大泉洋)は出てきた瞬間からお客の笑いと拍手を受けていた。情趣よりはドタバタメインの演出なのだが、このふたりが立ち聞きをするところではホタルがふたりの気持ちを表すために使われており、バカバカしくて笑える一方で主演ふたりの演技もあいまってロマンティックな多幸感がある。
最近、『あちゃらかオペラ 夏の夜の夢 ~嗚呼!大正浪漫編~』を見たばかりなのだが、日本物の翻案シェイクスピアもこういうちょっと昔の日本に設定して笑いに重点を置いてやればけっこうイケるのではないかな…と思う。「これ翻案する意味あったのかな?」という上演もけっこうあるのだが、喜劇はとにかく笑えるようにちゃんと作ればそれはそれで満足感はある。