中野で『フェイドアウト』を見てきた。日本で初めて映画(活動写真)を上映した大阪の輸入雑貨商である荒木和一(橋口俊宏)と、そのライバルで京都の実業家である稲畑勝太郎(西野内仁志)を描いた1年間の物語である。
メインの登場人物は4人で、主人公の2人以外に活動弁士の上田布袋軒(古川智)とその弟子(福田恵)が出てくるのだが、それ以外も小さいキャラクターについてはとっかえひっかえやるという形で進めている。アメリカから荒木が輸入したエジソン社のヴァイタスコープと、リュミエール兄弟のお友達だったという稲畑が輸入したシネマトグラフのどっちが人気を博すか、志あるビジネスマンであるこの二人が一生懸命興行をやっていた間は、いくらライバル関係とはいえ清々しく人々を楽しませようとする心意気の競争なので良かった…のだが、だんだんヤクザが興行に入り込んでいて2人とも手を引いてしまうという、ワクワクするようでいて実にほろ苦い終わり方の作品である。ラストに史実にはない想像のエピローグみたいな場面がついている。
90分でサクサク進むテンポのいい上演で、笑いもあるし、ところどころで使われるサイレント映画の映像も良い味を出している。東京ではそんなに芝居で見る機会が多くはない生き生きした関西弁のダイアローグを聞けるのもいい。原作小説もあるのだが、そのまんま大河ドラマにできそうな波乱の展開で、テレビドラマにすればいいのに…と思った。
芝居は大変面白かったし、原作者の東龍造によるポストトークも良かったのだが、ただポストトークで触れられていた第五回内国勧業博覧会のダンスの説明は若干誤解を招く気がした。今からするとなんてぇことない単純なダンスだ…みたいな紹介だったのだが、カーマンセラというダンサーが出ているらしいものの、絵からすると明らかにロイ・フラーのフォロワーと思われるので、全然簡単な演目ではなかったはずである。なお、初期のサイレント映画ではフラー(あるいはそのフォロワー)やアナベル・ムーア、リトル・エジプトなんかのダンスを撮るのはよく行われていた。