サム・ワナメイカー劇場でジェニファー・タン演出『シンベリン』を見てきた。
サム・ワナメイカー劇場はキャンドルの光で上演をするのだが、そこでこういう入り組んだ複雑な話をやるというのは、雰囲気はけっこう合っていると思った。タイトルロールのシンベリンは女王(マーティナ・レアド)に変更されており、これは前見たRSC版でもそうだったのでまあありがち…というか、ブーディカみたいな歴史上の女王を想起させるところもあり、なじみやすい変更なんだろうと思う。このプロダクションのシンベリンは一見人当たりがいいが腹黒い夫(サイラス・カーソン)にこっそり薬を盛られたり、気を遣うフリをしながら政治から遠ざけられたり、いろいろわかりにくい虐待を受けているが、最後は自分を取り戻して堂々と王らしく、かつ母親らしく行動しようとする…というようなキャラクターになっている。
娘で本作の事実上のヒロインであるイノジェン(ガブリエル・ブルックス)はレズビアンで、女性の恋人であるポスチュマス(ナディ・ケンプ=セイフィ)と結婚したため周囲から反対されているという展開である。これじたいはけっこういい変更に思えたのだが、ただこれだと終盤でポスチュマスとクロテン(ジョーダン・ミフスュド)の遺体を間違えるところが、単純な演出のままだとやや辻褄があわないように感じられるので(男と女の遺体を取り違えるかな…と思う)、もうちょっとここは工夫が要るのではと思った。イノジェンじたいは小柄できびきびしたヒロインで良かった。