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サブスタンス、思いっきり薄めました~『白雪姫』

 実写版の『白雪姫』を見てきた。アニメ版をかなり変更してリメイクした作品である。

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 とある王国で吹雪の日に跡継ぎのお姫さまが生まれ、白雪姫(スノーホワイト)と名付けられた。白雪姫(レイチェル・ゼグラー)は賢く愛らしい王女に成長するが、母が亡くなり、王は突然現れた謎の美女(ガル・ガドット)と再婚する。女王となった継母は王を追い出して国の実権を掌握し、白雪姫を虐待するが…

 いろいろ問題のある翻案である。レイチェル演じる白雪姫が可愛いし歌のうまさは鉄板だし、面白いところも多少はあり、若い女性がポジティブに人生を切り開く様子を明るく描いていて子ども向けの映画としてとくにものすごくひどいというわけではないと思うのだが、正直なところ、最近Netflixとかアマゾンプライムなんかでよく配信されている「パッとしないけど休みの日に見るならまあいいか」みたいなヒロインものファンタジーとか古典読み直しものとたいして変わらないようなことを大金をかけてやっているような感じで、あまり新鮮味がない。私はもともとのアニメ版の『白雪姫』をまったく面白いと思ったことがなく(子どもの時に学校で見たが何が面白いのかサッパリわからず、大人になってから見た沖縄方言で勝手吹替したバージョンのほうが面白かった)、アニメ版に一切思い入れがないので脚本の変更などはむしろ肯定的に評価できると思ったのだが、それにしても改変の方向性がどれも中途半端である。こういうヒロインのキャラクターを深める方向性で改変するなら『ブランカニエベス』という非常に面白い先行作(スペインのモノクロサイレント映画でなんと白雪姫が闘牛士になる)があるのだが、そちらに比べると全く見劣りするという印象だ。

 まず、王子様を山賊のジョナサン(アンドルー・バーナップ)にしたのは別にいい…のだが、いまいちやりたいことがはっきりしない。ロビンフッドみたいなワイルドで正義感あふれる義賊という感じでもないし、『塔の上のラプンツェル』や『アナと雪の女王』のロマンティックリードに似てはいるもののなんだか生煮え感があり、途中からこの人要るんかな…と思ってしまった。ロマンスが主題の映画ではなくなっているので、男性ロマンティックリードの役割が非常に小さくなっている。

 七人のこびとがCGでなんとなく生身の役者たちと並ぶと映像の質感が不揃いである上、ほとんどプロットに貢献もしないのでこれもまた要らんのでは…と思ってしまう。私の予想では、悪い女王が好んでいるアクセサリーの供給源はこびとたちが魔法の森で採掘している宝石なので、こびとたちが宝石の供給を断って女王を脅迫するとか、魔法をかけた宝石を売り込んで女王をだまくらかすみたいな復讐をするとかいうようなことをしたらだいぶ面白くなったと思うのだが、ディズニー映画なんでそんな狡猾な経済政策上の駆け引きみたいなことは起こらない。アニメ版に出てきた白雪姫に家事をやらせてばかりのこびとたちに比べると多少マシになってはいる気がするが、それでもたいして面白くなっているわけではない。

 一番問題だと思ったのは悪い女王のキャスティングである。ガル・ガドットがあまりにもミスキャストで、まず歌唱力が不足しているし、台詞回しにもかなり問題があると思った(これは日本語吹き替えとか日本語字幕だとそこまで気にならないかもしれないのだが、私は英語+英語字幕で見たのでだいぶ気になった)。アニメに出てくるあの素っ頓狂な衣装はそのままで迫力ある悪役を演出したいのなら、デカい歌をそつなくこなせて芝居がかった演技もよく似合う、ゲイとかレズビアンの舞台ファンに人気がありそうな色っぽい中年のミュージカル女優をこの役にあてるべきでは…と思うのだが、ガドットは基本的に正統派美女かつアクションスターみたいな女優であり、そういうキャンプでひねった面白さが売りの女優とは対極にある存在である。メチャクチャ綺麗なわりにキッチュな魅力とか表情豊かさみたいなものがないので、このレベルの美女がちっちゃくてかわいい白雪姫を前に自分の美貌にこだわっているとこを見ても、ただなんかイライラするだけで悪役らしい迫力がほとんど感じられない。

 全体的に問題だと思ったのは、この作品はたぶんデミ・ムーア主演の『サブスタンス』と同じテーマ、つまりルッキズムの内面化を扱っているのに、その扱いがあまりにも薄っぺらだということである。最後にとってつけたように心の美しさが大事だ、みたいな話になるだけで、このへんが全然掘り下げられていない。めちゃくちゃ美しいのに自分の美貌に不安を感じ、美が支配力の源だと考えている悪い女王が、自分と美しさで張り合おうという気はゼロの白雪姫を敵視し始めてモンスター化するという方向性でまとめればもっとだいぶ面白い話になったのではないかと思う。




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