dlrミル劇場でデイヴィッド・アイルランドのUlster Americanを見てきた。デクラン・ラドン演出である。
舞台は現代ロンドン、ウェストエンドの演出家であるリー(ケヴィン・ファヒ)の家である(この部屋のセットは結構ちゃんと作り込んであった)。リーはアイルランド系アメリカ人のハリウッドスターであるジェイ(ケヴィン・スタントン)を招いて北アイルランドの女性劇作家ルース(アシュリン・フィン)の新作を上演する予定で、ジェイとルースを含めた打ち合わせをする予定だった。ところがルースが遅れてきて、待っている間にジェイがリーに対して趣味の悪い答えにくい話題を振る。やっとルースが到着するが、戯曲の内容をよく理解していないジェイや、イギリス人視点でルースの芝居を見ているリーとルースの間の話は全然かみ合わない。
ものすごくダークユーモアに溢れた内容で、非常に笑える一方、最後はとんでもない暴力の爆発が起こる。登場人物は3人とも大変に感じの悪い連中で、リーは北アイルランド紛争に理解があるふりをしているものの上から目線なイングランド人、ジェイは無知でロクに下調べもしてこない傲慢なハリウッドスター、ルースは保守的で頑固な北アイルランドの劇作家である。ジェイやリーのルースに対する態度からは若い女性で北アイルランド出身であるルースをなんとなく下に見ているようなところが感じられるのだが、一方でルースも子ども時代のよく知らなかった友達を親友扱いするなどなかなか身勝手な人だし、正直、内容を聞いているだけだとあんまり劇作家としての才能もなさそうな気がする。アイルランドの前の作品である『サイプラス・アヴェニュー』と雰囲気もテーマも似ているのだが、この作品はアメリカ人が入ってくるせいで話がややこしくなっている…というか、北アイルランドとイングランドの関係だけではなく、アイルランドのことをほぼ何も知らないのに自分アイルランド系だから!と言い張るアメリカ人がいるせいでどんどん事態がまずいことになるというところがちょっと違う。序盤から展開があまりにもヒドすぎて(褒めてる)呆れて失笑してしまうみたいなところがたくさんあり、最後の残虐なクライマックスでも前のセリフを拾うようなジョークがあって、意地の悪い笑いに溢れた作品だ。シンプルだがツボは押さえた演出で、後味は最悪だが大変面白かった。