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映画に忠実なのに別物に~『博士の異常な愛情』

 舞台版『博士の異常な愛情』を見てきた。言わずと知れたキューブリックの有名映画をショーン・フォーリーとアーマンド・イアヌッチが舞台化し、フォーリーが演出したものである。スティーヴ・クーガン主演で、クーガンはふつうは4役なのだが、ダブリン公演では前日まで病気で倒れていたのもあってアメリカ大統領マフリーとストレンジラヴ博士の2役だった。

 内容はかなり映画に忠実である。セットも映画に似せており、でかいボードのある会議室とか、ごちゃごちゃした軍基地の執務室とか、多少舞台っぽい誇張はあるがそのまんまだ。核弾頭を詰んだ飛行機については、コックピット部分は舞台に大きな座席を設置し、後部をスクリーンに映像で投影して、けっこう臨場感のある演出にしている。

 クーガンの2役はすごく笑えるし、とにかくダークなユーモアあふれる作品で、昨今の政治情勢を考えると笑えるだけではなくうすら寒い恐ろしさもある…のだが、一方でこんだけ映画に忠実にやっても舞台は映画と別物になるんだなと思った。映画は対象と距離をとった非常に温度の低い笑いが特徴で、あの冷たさがキューブリックキューブリックたらしめているものだと思うし、ある意味異常だと思う。ところが舞台だとお客さんが要所要所で大爆笑するし、役者もそれにあわせてうまくタイミングをはかったりするので人間同士の有機的なコミュニケーションが発生してしまい、わりときびきびしたホットな芝居になる。そしてそう考えるとこういう不条理コメディは舞台ではけっこうあるな…という気がするので、そんなに斬新さとか異常さを感じないところがある。映画と舞台の特性の違いを大きく感じるプロダクションだった。




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