ゲイエティ座でジェズ・バターワースの『フェリーマン』(The Ferryman)を見てきた。アンドルー・フリン演出で、この戯曲がアイルランド共和国で上演されるのは初めてだそうである。
舞台は1981年、アーマーの田舎にある農家である。クィン・カーニー(アーロン・マカスキー)はかつてはIRAの闘士だったが、今は農場を営み、家族を大事にして暮らしている。弟シェイマスは10年にわたって行方不明で、シェイマスの妻ケイトリン(シャーリーン・マッケナ)はカーニーの農場に同居しながら息子オシーン(オレン・キンラン)を育てている。収穫祭の直前にシェイマスの遺体が見つかったという知らせが入る。
よくできた戯曲ではあるのだが、個人的には全然好きになれなかった。なにしろ3時間半にある大作なのだが、全体的にテンポ感が私にあわない…というか、北アイルランド的とされるいろんな要素を手当たり次第に盛り込もうとしている感じがある一方、それがクライマックスの過激な展開に密接につながるように構成されてはいないという印象を受けた。とくに第3幕の最初の若者たちの会話はここでいきなりごそっと逸話交換みたいなことをやるのではなく、全体に少しずつ散らすような感じにして、ここでは重要情報だけ伝えるようにしてほとんど刈り込んでもいいのでは…と思った。正直なところ、2時間弱くらいでタイトに盛り上げられる内容の話を盛り盛りにしてかさ増ししているような気がした。
そしてこの北アイルランド的な要素がてんこ盛りというところがちょっと引っかかる…というか、これはイングランド人の劇作家が書いてロンドンで初演した芝居だということだ。ダブリンでの上演で、キャストもいいのであまり気にならない感じにはなっていたが、いわゆるアイルランドのステレオタイプに陥りそうな要素はかなりたくさんある。さらにこれだけ延々と北アイルランド紛争の話をしておいて最後は家庭内のメロドラマに…みたいな落とし方もどうなのかな…と思うところがある。バターワースの芝居だと『モジョ』も私は全く好みではなかったのだが、どうも劇作家と相性が悪いのかもしれないと思う。