以下の内容はhttps://saebou.hatenablog.com/entry/2024/12/21/004011より取得しました。


暴力ディズニープリンセスの戦い~『クレイヴン・ザ・ハンター』(ネタバレあり)

 『クレイヴン・ザ・ハンター』を見た。ソニーズ・スパイダーマン・ユニバースの作品である。

www.youtube.com

 ロシアの裏社会で強い影響力を持つ大金持ちの一族クラヴィノフ家の御曹司であるセルゲイ(アーロン・テイラー=ジョンソン)は父ニコライ(ラッセル・クロウ)と全くうまくいっていなかった。弟のディミトリ(フレッド・ヘッキンジャー)と一緒にニコライに無理矢理連れて行かれた狩猟でライオンに襲われたセルゲイは、たまたま出会ったカリプソ(アリアナ・デボーズ)に謎の薬で救われ、動物的な力を持つようになる。家出したセルゲイはハンターのクレイヴンとしてさまざまな悪党を狙うが…

 映画としてはかなり緩い作品である。全体的に流れがかなり悪く、もうちょっと編集を工夫すべきでは…と思うところが多い。とくに中盤でディミトリが誘拐されてクレイヴンが追うくだりが非常に混乱しており、さっきまで車道ですったもんだしていたのにいきなりヘリコプターが出てきて、クレイヴンはそこまでどうやって追っていったのかほぼわからないようなつながりになっている。脚本もだいぶしっちゃかめっちゃかで、いくらなんでも弁護士のカリプソが、刑務所に入っている人をわざわざ殺しに行ったクレイヴンをすぐ受け入れるのは強引すぎでは…とか、いろいろ突っ込むところがある。見ていてムカつくとか不愉快だというかいうようなダメさではないのが、まあもうちょっと丁寧にやらないとダメですよね…という感じだ。

 出来の点では全然よろしくないとは言え、興味深いところはけっこうある映画だとは思う。私はクレイヴンというキャラクターがどういう人物なのかほとんど知らないで見たのだが、スパイダーマンシリーズの悪役だというわりには全然悪役らしくない。狙う相手は組織犯罪者とか密輸業者とか、全く観客の共感を誘わない悪人ばかりなので、どんどんボディカウントが増えても、少なくとも映画の展開としてはあまり倫理的な問題を感じられない。全体が「肉食動物が食うために動物を殺すのは自然の掟に従っているのでOKだが、密輸やトロフィーハンティングは自然の掟に沿っていないのでゴミ」という価値観に基づいて作られており、だからといって密輸犯を全員血祭りにあげるのはどうかとは思うが、まあ一応、映画としては理解できる倫理観で行動している主人公である。このトロフィーハンティングの是非という問題が最後にちょっと効いてくる。

 このへんの倫理的な一貫性も含めて、主人公のクレイヴンはアメコミ映画の悪役というよりは暴力ディズニープリンセスみたいなキャラクターである。何しろクレイヴンは父に虐待されており、亡き母の思い出を大事にしていて、動物にすごく好かれており、魔法の力で変身した、家族思いでDIYが得意な優しい若者である。少年時代にライオンに敬意を示したり、鳥と目が合ったりするところでもういかにもディズニープリンセスっぽい。クレイヴンはワイルドだし独善的な倫理観を持っていてすぐ暴力に訴えるが、妙に心が優しく真っ直ぐなところがあり、動物と一緒にいると相手のカワイさを引き出してしまうという非常に変なバランスのキャラクターである。この妙なバランスのため、全体的に親元を逃げ出した野性的な暴力ディズニープリンセスが動物の力を借りて弟が非行に走らないよう尽力するのに、結局全部パーになってしまう…みたいな話に見える。




以上の内容はhttps://saebou.hatenablog.com/entry/2024/12/21/004011より取得しました。
このページはhttp://font.textar.tv/のウェブフォントを使用してます

不具合報告/要望等はこちらへお願いします。
モバイルやる夫Viewer Ver0.14