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枢機卿がまるで高校生みたいに見えてくる映画~『教皇選挙』(ネタバレあり)

 エドワード・ベルガー監督監督『教皇選挙』を見た。

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 ローマ教皇が突然亡くなり、首席枢機卿トマス・ローレンス(レイフ・ファインズ)はコンクラーヴェ教皇選挙)を催行する責任者となる。枢機卿たちが到着し、コンクラーヴェ期間の隔離が始まるが、秘密で任命されてこれまで全く存在を知られていなかったベニテス枢機卿(カルロス・ディエズ)が突然到着し、さらに選挙開始直前に有力候補のトランブレ枢機卿ジョン・リスゴー)について職務上の疑惑が持ち上がるなど、ローレンスは気の休まる暇もない。ローレンスは自分と同様、リベラル派のアルド・ベッリーニ枢機卿スタンリー・トゥッチ)を推しているが…

 中盤くらいまでは真面目な政治サスペンスといった感じなのだが、だんだんなんか笑える映画に見えてくる…というか、そもそもカトリック教会の儀礼じたいがちょっと大げさで派手なものでもあるので、芝居がかかった儀式をスカートはいた中年男たちが大真面目な顔でこなす一方(一般信徒の男性がスカートを履いたら眉をひそめそうな人たちなのに、自分たちは豪華なドレスみたいな格好をしているというのがなんかおかしい)、裏では足の引っ張り合い…というのが少々面白おかしく見えてくるところがある。ベルガー監督の前作は『西部戦線異状なし』で、これも男ばかりの世界を真面目に描きつつ、その不条理さとか機能不全ぶりが少しずつ浮かび上がってくる…というような話だったのだが、『教皇選挙』は前作に比べると深刻さが少ないぶん、大げさな儀礼を綺麗だとは思いつつ諷刺的に見る視点が入ってきていると思う。豪華な儀礼を美しく執り行っているわりには、神と教会と信徒のコミュニティに仕える立場であるはずなのに権力のことで頭がいっぱいの枢機卿たちはけっこう低レベルな争いをしている。描き方は重厚なのだが、よく考えるとまるで学園の人気者を引きずり下ろそうとする高校生なんかとたいして変わらないことをしているように見えてくる。とくに後半にまるで『ミーン・ガールズ』か『クルーエル・インテンションズ』かよ!みたいなカフェテリアで展開される場面があり、ここで真面目だけど無視されている縁の下の力持ちキャラであるシスター・アグネス(イザベラ・ロッセリーニ)が威張り腐った枢機卿どもに一矢報いるところはとても面白いし、枢機卿たちの反応が非常に笑える。なお、私が見た回では意外に若い観客が多くて何度も笑いが起きていたのだが、この場面は全館爆笑だった。私もけっこう笑える映画だとは思ったのだが、アイルランドカトリックの国なので神父が大真面目に見栄を張るだけでちょっと可笑しい…みたいなのがあるのか、私にはよくわからないところでもけっこう観客から笑いが起こっていた。

 ファインズはじめ役者陣の演技がいいし、ひとつひとつの画面がとても綺麗で面白い映画ではあるのだが、最後のオチは私はちょっとな…と思った。ネタバレになるのであまり詳しいことは言えないが、人のアイデンティティとか重大な健康問題とかにかかわることをサプライズ開示して終わりにするのは、人生における重要なことをただプロットの推進装置にしているだけみたいな印象を受けるので、個人的にはあまり好きではない。ただ、この作品のテーマは信仰において疑いを抱いたり、不確定性を認識したりすることの重要性なので(主人公の名前がトマスは、たぶん使徒トマスが疑い深い性格でイエスの復活をなかなか信じなかったという聖書の記述に引っかけている)、テーマには沿った終わり方になっていると思う。

 なお、一点気になったのはジョン・リスゴーの役柄のバックグラウンドである。名前を「トランブレ」みたいに発音していてカトリック枢機卿なので、カナダのフランス語圏の出身者という設定ではないかと思うのだが、わりとジェネリックな北米アクセントみたいな英語で話している。あまりカナダっぽさがなくてこのあたりはよくわからなかった。




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