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面白いところは多いが、センセーショナルすぎる気が…『エミリア・ペレス』

 ジャック・オーディアール監督『エミリア・ペレス』を見た。

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 メキシコで働く弁護士リタ(ゾーイ・サルダナ)は犯罪組織のボスであるマニタス(カーラ・ソフィア・ガスコン)に依頼され、実際はトランスジェンダー女性であるマニタスが今の身分を捨てて女性として暮らせるようにするための手助けをすることになる。マニタスは家族に対しても自分が死んだことにし、マニタスの親戚の女性エミリア・ペレスとして暮らし始めるが、自分の子どもたちに会いたいという気持ちが押さえきれず、リタの助けを借り、エミリアおばさんとして事実を隠して妻子に再会する。一方でエミリアはかつての悪行の贖罪として、組織犯罪に関連する誘拐犠牲者の捜索や被害者家族の支援活動で頭角を表すようになる。

 テンポが早くて次々と新しい展開が出てくるし、ミュージカルでもあるので歌やダンスもあるし、主演女優陣の演技がいいので、全く退屈な映画ではない。エミリア役は実際にスペイン語圏ではかなりキャリアのあるトランスジェンダーの女優であるガスコンが演じていて、この演技だけでもみる価値はあるし、もうひとりの主演女優であるサルダナもミュージカル的な見せ場が多い。役柄としてはけっこう通り一遍な感じではあるのだが、エミリアの若い元妻で全く事情を知らないジェシ(セレーナ・ゴメス)も頑張っている。

 一方でかなり大袈裟でメロドラマ的な作品でもあり、いろいろな点であんまり新しくはないと思った。エミリアトランスジェンダー女性であることがプロットの中核にあるのだが、エミリアが女性として暮らす際に経験する苦労とか受ける差別などがほぼ描かれておらず、単に手術をして別人として暮らすようになったら誰からも気づかれずに済みました…みたいな感じで、もう20年近く前の『アグリー・ベティ』の頃のトランスジェンダーの人の性別変更を驚きの種みたいに扱う若干センセーショナリズム的な展開とあまり変わっていないように思える。やたらと性別適合手術のあたりに時間が割かれているのにエミリア自身が医師ときちんとした話し合いをする場面はなかったり(まあ組織犯罪者で身元を隠したいという理由づけはあるのだが)、身体にばかり注目がいっているのも気になった。本来ならエミリアがすべきなのは少なくとも妻と子どもにだけは正直に自分の気持ちを打ち明けることだと思うのだが、そういうことについてエミリアが悩んだりする場面もないので、心理描写についてはわりと雑な作品だと思う。ガスコンの演技がなければけっこうエミリアは平べったいキャラクターに見えたかもしれないと思う。

 さらに気になったのが、この映画はフランス映画なのにメキシコは組織犯罪が横行するヤバい場所!みたいなステレオタイプに丸ごと乗っかっていることである。全体的にヨーロッパの白人視点でメキシコをエキゾティックな他者扱いするような雰囲気があり、そのあたりがあまりいいと思えない。どうしてもそういうことをしたいのなら、メキシコの男性中心的な文化やトランスジェンダーの人を蔑む傾向のせいでエミリアがやすやすと女性として暮らせないのだということをもっと丁寧に描いたほうがいいと思うのだが、そういうのはすっ飛ばして「メキシコだからね!みんなマッチョで理解がないんだよ!!」みたいな感じで流してしまっており、メキシコを単純化する姿勢が気になった。




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