アナ・ケンドリックの初監督作である『アイズ・オン・ユー』をNetflixの配信で見た。これはデーティング・ゲーム・キラーとして知られる連続殺人鬼ロドニー・アルカラが起こした事件をもとに大幅を行った犯罪スリラーである。
1978年、なかなか売れずに困っている若手女優シェリル(監督もつとめているアナ・ケンドリック)はエージェントのすすめで『ザ・デーティング・ゲーム』というデートリアリティ番組に出ることにする。これはひとりの女性が姿が見えない3人の独身男性に対して質問をして答えてもらい、最後の女性が中からひとり男性を選ぶという内容の番組である。シェリルは渡された質問がバカバカしいものばかりだったので自ら質問を変更し、いかにも女性を尊敬しているような答えをしていた3人目の男性ロドニー(ダニエル・ゾヴァト)を選ぶ。ところが番組後、ロドニーの態度がどうもおかしいことに気付く。この番組の経緯と並行して、ロドニーが実は殺人鬼でこれまでさまざまな女性を狙っていたことや、番組をテレビ局で視聴していた観客のひとりであるローラ(ニコレット・ロビンソン)がどうもロドニーが殺人事件の被疑者ではないかということに気付いた経緯なども描かれる。
今年はホラーの当たり年だったのだが、正直たいていのホラーよりも怖い映画である。女性が男性にどういうふうに細かくメンタルを削られるかみたいなことを細かくリアルに描いており、超常現象などが一切絡まず、女性なら誰でも若い時に一度くらい経験したことがありそうなイヤな感じの出来事が次々と起こってさらに殺人まで…ということで、怖いし不愉快だ。そもそもシェリルがデート番組に出る前の時点でいろいろ細かく性差別を受けるところからして感じが悪いのだが、こういう態度を許しているのがさらなる暴力につながりますよね…みたいなほのめかしとしてうまく機能している。メインの視点人物はシェリルだし、全体的にほとんどのシークエンスがロドニーに狙われた若い女性の視点で描かれており、ロドニーではなく殺人被害者女性の主体性や人間性に焦点をあてている。大事には至らなかったのだが狙われたうちのひとりは若い男性で(殺人の被害者はほぼ女性だが、若い男の子のヌード写真も撮っていたらしい)、この男性を誘うくだりも非常に不快なので、被害者は女性であることが多いが、実は性別にかかわりなくグルーミングのターゲットになりますよ…とか、外面は良くて好感の持てそうな人が実際は危険であることもありますよ…いうことも上手に示されていると思う。最後のローラ、シェリル、ロドニーからなんとか逃げて通報をしたエイミー(オータム・ベスト)がひたすら男性に苦しめられ続ける三連続はけっこうキツい。かなり脚色があるが、警察が無能だったせいで殺人を防ぐことができなかったというのは史実だそうで、女性に対する暴力を許している社会環境の問題を鋭く指摘した映画である。