ウェクスフォードオペラ祭で第一弾としてピエトロ・マスカーニ『仮面』(Le Maschere)を見た。フランチェスコ・チッルッフォ指揮、ステファノ・リッチ演出である。
全体がコメディア・デッラルテの劇団による上演だという枠に入っている。ロザウラ(ラヴィニア・ビニ)はフロリンド(アンドルー・モースタイン)と相思相愛だが、ロザウラの父パンタローネ(マリアーノ・オロツコ)は娘をスパヴェンタ(マテオ・マンチーニ)と結婚させたがっている。ロザウラのメイドであるコロンビーナ(ヨアナ・コンスタンティン・ピペレア)も薬売りのブリゲッラ(ギレン・ムンギア)と結婚したいのだが、とりあえずロザウラとスパヴェンタの結婚を阻止しなければ…ということで、ブリゲッラが結婚契約のパーティでみんなに魔法の薬を盛ることを提案する。
現代のお金持ち向けウェルネススパが舞台の演出で、パンタローネがあんまり役に立たなそうな施設経営者という設定である。ロザウラはこのスパでマネージャーみたいな仕事をしているし、コロンビーナもロザウラのメイドというよりはアシスタントみたいな感じである。ブリゲッラはたぶんもともとの設定ではマウンティバンク(大道薬売り)のような職業が想定されていると思われるが、このプロダクションではスパに出入りしている業者みたいな役になっている。この設定はけっこう効いており、スパのセットやお風呂用ガウン中心の衣装のチョイスも面白いし、パンタローネがかなりリッチでスパヴェンタに財産を狙われているというのもわかりやすい。
音楽はけっこう軽快で楽しいのだが、一方でとにかく話がメチャクチャで、しょうもない台本である。それぞれのキャラクターはコメディア・デッラルテの類型から出ていないし、展開にもかなり無理がある。とりあえず引っかかったところとしては、薬を使って結婚契約パーティをメチャクチャにするならパンタローネ、スパヴェンタ、スパヴェンタの召使いアルレッキーノ(ブノワ・ジョゼフ・マイヤー)だけに盛ればいいと思うのだが、なぜか自分たちも含めて全員に薬を盛っており、ワケのわからないことになっている。また、タルタリア(ジョルジョ・カオドゥーロ)が吃音症でそれをネタにしたギャグがあり、今だとあんまり笑えないよな…と思った。このプロダクションではタルタリアがいい人なのにパンタローネたちから軽んじられているみたいに描かれているのでそこまでイヤな感じではなかったのだが、それでもけっこう演出でいじらないといけないタイプの役だと思う。