トリニティ・カレッジ・ダブリン内のサミュエル・ベケット劇場にて、ダブリン演劇祭の一環として上演されるフォースト・エンタテイメントのSignal to Noiseを見た。フォースト・エンタテイメントはシェフィールドの有名なカンパニーだが、初めてライヴで見た。
前衛的なパフォーマンスなので別にお話は無い。AIの声によるあらかじめ録音されたセリフが流れ、6人のパフォーマーが衣装を取っ替え引っ替えし、さらに椅子をはじめとするさまざまな道具類を動かしながらそのAIの声にあわせて口パクする。セリフは何回も繰り返されるのだが、役者がちょっとずつ動作や表情を変えながら口パクするのでなんとなく可笑しかったりする(笑うところはけっこうある)。6人の役者は最初は全然コミュニケーションしていないのだが、途中からダンスみたいな動きを通してちょっとばかりコミュニケーションするようになる…ものの、セリフも動きもたいがい不条理で、コミュニケーションは全体的にあんまりうまくはいっていない。
ユーモアも動きもあるので別に退屈はしないのだが、またこのカンパニーの上演を見たいかと言われると別に見たくはないな…というような公演だった。独創性は分かるし、この種のパフォーマンスが好きな人はいるだろうなとは思うのだが、私の趣味からするとちょっと長いし、また非常に個人的な感覚として、AIがしゃべっているのをわざわざお金を払って見に来たくはないというような気持ちがある。私は役者自身がそこでしゃべったり動いたりコミュニケーションしたりするのを見に舞台に来ているのであって、その労力にお金を払っているのだという感覚があるからだと思う。たぶん自分が英語のアクセントを消すために読み上げ装置とかを使った経験があるので、クセを消す標準化の装置としてのAIの声がクリエイティブなものとして使われるのに面白みを感じないんだろうと思う。