『ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー』を試写で見た。
有名デザイナーであるジョン・ガリアーノの業績に関するドキュメンタリー…ではあるのだが、初っ端から泥酔したガリアーノが相当にえぐい人種差別発言をする2011年のフッテージから始まる。このためなかなか深刻な内容になっており、ガリアーノの才能と問題点が両方とも詳しく描かれている。見ていてガリアーノを完全に肯定も否定もできないというような作りになっている。
前半はガリアーノの才能と成功にかなりフォーカスしている。移民の息子で、ゲイであることをなかなか家族に受け入れてもらえず、ロンドンで外れ者として育ち、アートスクール時代から頭角を現して革新的デザイナーとしてまたたくまに成功…という様子が語られる。アナ・ウィンターやケイト・モスなどファッション界の著名人も登場する。しかしながらガリアーノは酒、薬に溺れていてさらに仕事中毒でもあり、周囲の人々との関係もだんだん危なくなる、2011年には泥酔して公の場で人種差別発言をする映像が出回り、仕事をクビになる。
この人種差別発言はかなりひどいもので、実際にガリアーノに差別発言を投げつけられた人も出演しているのだが、被害者はこの差別発言とそれに続くトラブルで具合が悪くなってしまったらしい(それも当たり前だと思えるくらいはひどい)。ガリアーノの周りで働く人たちも相当、傷付けられている。一方でアルコール依存症の父親が暴力を振るう家庭で育ったシャーリーズ・セロンは(母親が家族を守るため父親を射殺するという大変な経験をしている)、ガリアーノがメンタルな問題を抱えていることに同情し、友人として見守ろうとしている。
正直なところ、私はガリアーノの差別発言の映像を見て、いくら泥酔していてもこんなひどいことは言えないだろう…と思うくらいは引いた。さらにガリアーノはその後後悔していろいろな人からアドバイスをもらっており、反ユダヤ発言をしたことを悔いてラビのところに通ってホロコーストについて学んだりするのだが、それでもなんだか最後まで人種差別の深刻さはあんまりちゃんと理解できていないような感じがした。才能はあるのだが本当に困った人で、きちんと立ち直っているのかと言われると疑問に思った。