ジョージ・ミラー監督の新作『アラビアンナイト 三千年の願い』を見てきた。
ナラトロジー研究者であるアリシア(ティルダ・スウィントン)はトルコで行われる大きな研究会に出席した際、そこでガラスの瓶を買った。ところがちょっとしたきっかけにより、瓶の中からジン(イドリス・エルバ)が出てくる。ジンはアリシアの3つの願いを叶えると言うが、アリシアはとくに望んでいることがなく、さらに(何しろナラトロジーの専門家なので)こういうお願いをすると危険なことになると警戒してなかなかお願いをしない。ジンはこれまでの自分の経験をアリシアに語るが…
アラビアンナイトを現代風に脱構築したおとぎ話映画である。ジンが語るいろいろな物語は時代ごとに雰囲気の違う華やかな映像を用いて語られており、ここだけでも十分面白い。このあたりは『五日物語—3つの王国と3人の女—』などに近い感じの、現代風なおとぎ話の再話である。
こうしたお話をジンから聞いたアリシアとジンの間に怒濤のロマンスが生まれる終盤はかなりロマンティックな恋愛映画になっている。ここで面白いのは、あまり欲しいものがなかったアリシアが、お話に刺激されてジンを愛したいと思うところだ。ジンは女性と話すのが大好きで、愛されたいと願っている。アリシアの願いは美しい過去の物語と、それを面白く語るジンの芸術的な才能にナラトロジー研究者として惹かれたからである一方、ジンの隠れた願いを叶えたいという優しさによるものでもあり、その意味では相互的な願いと言える。このあたりは物語が持つ力への信頼に溢れた展開で、物語が人を結びつける力を称えた映画だと言えると思う。