現在、ツイッターをやっている英文学ファンの間で話題騒然の"Such Tweet Sorrow"。
これ、ロイヤルシェイクスピアカンパニーの新企画で、ツイッターを使って『ロミオとジュリエット』の翻案をやるというやつである。木戸銭はもちろん無料で、ツイッターアカウントを持っていれば誰でも見ることができる。
とりあえずは役者に役名でツイッターアカウントをとらせてかなり即興に近い形で話をすすめる(大まかな筋とかキメ台詞はもちろん決まっていると思うのだが)という試みで、なんかマイク・リーの即興演出映画みたいな感じなのだが、ちょっと違うのはツイッターというのはアカウントを持っている人同士なら誰でも勝手に人に話しかけておしゃべりすることができるので、役者は話しかけてきた外部の人にキャラにあうような返答をしなければいけないということである。それどころかマキューシオ役の人とかは勝手にフォロワー(お客さん)を口説いたりしているようなので、なかなか役者さんたちも大変だ。
元々の設定ではジュリエットは14歳、ロミオはやや年齢不詳(私の妄想では16歳くらいなのだが、もう少し上かも)なのだが、今回の"Such Tweet Sorrow"ではジュリエットは16歳、ロミオは19歳である。これはおそらくさすがに14歳の少女がパーティで飲んだくれてそこで出会ったよく知らない相手と関係してそれをツイッター上で中継とかいうのは演劇であってもなかなかブリテン市民がびっくりするからだろうと思うのだが、それでも16歳と19歳なのでそこはかとなく公序良俗に違反している気がする…のだが、『ロミオとジュリエット』はそもそも「公序良俗のせいで若者たちの恋が台無しに!」という話なのでまあいい。
"Such Tweet Sorrow"ではロミオはXBoxにハマっている。原作でジュリエットと会う前にロミオが片想いしていたロザラインは、この翻案ではゲームの関連でオンラインで会った女性ということになっているのだが、これは大変うまいなぁと思う。なぜかというと原作のロザラインというのはいわゆるペトラルカ式のつれないミストレスで、ロミオが全く自分に興味のないロザラインを勝手に理想化して祭り上げているということになっているからである(ロミオはどうやらペトラルカにハマっているようで、マキューシオにそのことでからかわれている)。ネットで会った人を勝手に理想化するとかいうのはよくある話だと思うのだが、ルネサンス期の詩人たちがロクに会ったこともないような女性たちを理想化して片想いに悩んでいたことを考えると、ペトラルカ式片想いメソッドをネットにあてはめたこの翻案は実に巧妙だ(これについては「ルネサンスの脳内彼女について」でちょっと書いたんだけど)。
そんなわけで原作のロミオは生身の美少女ジュリエットに会った瞬間、脳内彼女ロザラインを忘れてすっかり現実の恋に夢中になってしまうわけだが、"Such Sweet Sorrow"でも、ロミオはXBoxを破壊したあと(破壊写真がタイムラインにアップされてた)、ジュリエットの16歳の誕生パーティでバースデイガールに一目惚れしてしまう。現在のところ、"Such Tweet Sorrow"タイムラインはジュリエットの姉ジェス(原作の乳母に相当)がロンドンマラソンに参加しているという話でいっぱいで、二人の恋については小休止中という感じなのだが、今後ロミオとジュリエットがどうなるのかとても気になるところである。パリスはいつ出てくるのかとか…
しかしながら現在のところ、日本語ツイッターでアクティヴな初期近代英国演劇専門家は観測範囲内に3人くらいしかいない。nofrillsさんが紹介記事を書いたり、togetterでハイライトを作ってくれたりしているのだが、専門家的には全てのTLを保存して他の人に紹介できたほうが好都合だろうと思うので、これはちょっと私の出番だろうと思ってtogetterまとめなどを作ってみた。
本筋。
パート1 開始〜4/16夜まで
パート2 4/17朝〜4/25ロンドンマラソン朝まで
受容史の人としてはこれもやっとかないといけないところ、感想まとめ。
日本語感想まとめ
英語版感想まとめ1
英語版感想まとめ2
英語版感想まとめ3
英語版感想まとめ4
(上の四つは重いので専門家向け)