収録作品:「泣きぼくろ」「姑の墓」「同行二人」「黒武御神火御殿」
聞き手になった富次郎の駆け出し。
比較的あたたかい作品が多かった。
「姑の墓」は怖さもありながらラスト、富次郎の台詞で普通に泣いてしまいました。
「同行二人」かっこいい。いなせな男は五十路になっても惹きつける。甘いものに逃げる富次郎との対比が良い。
この2作は、怖さの過程とそれがオチる反転が大変見事だと思った。
「黒武御神火御殿」キリスト教的世界観。七つの大罪がモチーフなんだろうか。それは類型に当てはめ過ぎか。次々に変わっていく世界の様子は『ドリームバスター』を思い出す。ホラーファンタジー。
最終盤お秋の話で明かされる“変わり百物語の評判が高まってゆくことが、ひどく腹立たしくもあった”は、ここにきて洞察のあざやかさよ宮部みゆきの、と感じ入ってしまった。
全体に4編、ただのホラーというだけでなく〈謎解き〉のエッセンスが強く含まれているように感じた。謎が明かされるというときめきがある。
新しい聞き手の逡巡と成長を、読者もまた(おちかのそれと同じように)追体験できるのも嬉しい。