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「夜明けまでに誰かが」ホリー・ジャクソン/服部京子訳/東京創元社-嫌悪を誘うオリヴァーの存在が、最後になって不思議な安堵感を生み出している

 

 

読んでいる間ずっと緊張が途切れない、圧倒的なスリルに満ちたサスペンス小説。それが、本書「夜明けまでに誰かが」である。著者は「自由研究には向かない殺人」に始まる“向かない三部作”で翻訳ミステリーファンのハートをガッチリと掴んだホリー・ジャクソン。本作はシリーズとは違うパワーを持った作品になっている。

物語は終始キャンピングカーの中で展開される。レッド、マディ、サイモン、アーサーの高校生4人とオリヴァー、レイナの大学生2人の計6人の若者たちが乗るキャンピングカーが、何者かの画策で人気のない場所に迷い込み、タイヤをパンクさせられて身動きがとれなくなる。キャンピングカーという密閉された空間に閉じ込められ、外部との連絡手段もなく、正体のわからない犯人から狙撃される恐怖。そして、6人の中の誰かがこの事態を招くことになった重大な秘密を抱えているということで生まれる不安や相手に対する疑心暗鬼の心と向き合わざるを得ない状況に追い込まれていくプロセスがスリリングだ。

物語の視点人物となるのは高校生のレッド。彼女は数年前に警察官だった母親が殺されるという大きな喪失を経験しており、心に影を抱えている。そして、彼女がなにかしらの秘密をもっていることも物語の序盤から匂わせている。

もうひとり、物語で重要な役割を担っているのが大学生のオリヴァーである。6人の中では一番の年長者でありリーダーとして振る舞うのだが、その言動はリーダーとしての資質とは真逆だ。自己中心的であり、他人の意見を自分の意見であるかのように発言する。あれこれと指図するのに結果に対して一切責任を取ろうとしない。物語の中では彼の判断ミスがさらなる事態の悪化を招くのだが、オリヴァーは自分のミスを認めず、他人に責任を押し付ける。彼の発言や行動には嫌悪感を覚える。

ただ、オリヴァーというクズ男の存在がこの作品の重要な要素になっているのは間違いない。読んでいて、「こいつはとんでもないクズ野郎だな」と終始ムカムカするが、オリヴァーという悪役の存在が読後に感じるやるせなさや悲愴感を軽減し、むしろ溜飲を下げることになる。物語を読み切った読者に嫌な読後感を与えないという意味で、オリヴァーは貴重な存在なのだと感じた。

向かない3部作でも感じたことだが、ホリー・ジャクソンが巧みなストーリーテラーであることは本書でも最大限発揮されている。先の展開が気になってページをめくらずにはいられないという気分にさせるのは作家の力量だ。なぜ彼らは狙われたのか、誰が秘密を抱えているのか、この危機的状況を打破して6人は生き延びることができるのか。常に不安と期待が入り混じり、ちょっと息苦しくなるほどの緊張感で物語が展開していく。それが読んでいてビシビシと伝わってくるのだ。

この作品を読み終えて強く感じたのは、人間の本性が徹底的に描いているということ。極限状態で人はどこまで自己中心的になれるのか、逆に、他者を思いやり、守ろうとする勇気はどこから生まれるのか。人間の多面性が、閉ざされたキャンピングカーという限られた空間で展開される物語の中に凝縮されているように思えた。人間の弱さや卑劣さ、あるいは優しさや勇気を目の当たりにすると、もし自分が彼らの立場だったらどう振る舞うだろうかと考えさせられる。私は、自分が同じ立場になったら、オリヴァーにはならないと胸を張って言える自信がない。

本書は向かない3部作を読んでいなくても十分に楽しめる作品だ。むしろ、ホリー・ジャクソンの最初の一冊として読むならば、この作品から手に取るのもアリだと思う。そのくらい本作には、ホリー・ジャクソンの持ち味が存分に詰まっている。




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