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「関心領域」マーティン・エイミス/北田絵里子訳、田野大輔監修/早川書房-それぞれの関心領域の中で繰り広げられる物語

 

 

1945年1月27日、ポーランドに進軍したソ連軍によってアウシュヴィッツ強制収容所は解放されました。今年(2025年)は、解放から80年となる節目の年であり、現地では追悼式典が行われました。

マーティン・エイミス「関心領域」は、アウシュヴィッツ強制収容所とその周囲を舞台にした作品です。タイトルの「関心領域」は、ナチス親衛隊がアウシュヴィッツ強制収容所を取り囲む40平方キロメートル以上のエリアを“関心領域(The Zone of Interest)”と呼んでいたことに由来しています。

物語は3人の人物視点で展開します。収容所の所長であるパウル・ドル、ブナ・ヴェルケという合成ゴム工場の連絡将校であるアンゲルス・ゴーロ・トムゼン、収容所に収容されているユダヤポーランド人のシュムル・ザハリアスです。

トムゼンは、金と家柄、さらに容姿にも恵まれた男で、パウル・ドルから『銀の男根をくわえて生まれてきた』と陰口をいわれています。ヒトラー総統の最側近であるマルティン・ボルマンを叔父に持ち、その妻ゲルダからも気に入られています。トムゼンという人物は架空の存在ですが、マルティン・ボルマンは実在の人物です。

そのトムゼンがひと目惚れしたのがアウシュヴィッツ強制収容所所長パウル・ドルの妻ハンナです。

ひと目見たときに、何かが起こった。稲光、落雷、突然の豪雨、陽光、虹──ひと目惚れの気象学だ。

とありますから、かなりの衝動だったのでしょう。ハンナと関係を結んだトムゼンは、彼女からディーター・クリューガーという人物の消息について調査してほしいと頼まれます。

ハンナの夫であり、強制収容所の所長として君臨するパウル・ドルは、自己中心的で大酒飲みな人物として描かれています。強制収容所における絶対的な権力を持ち、自らの正義を信じるパウルですが、日々行われているユダヤ人捕虜の大量虐殺を主導することが精神的な負担にもなっていて、アルコールや薬物への逃避に向かわせているというのが実状です。

3人目の人物であるシュムルは、ユダヤ人として強制収容所に収容され、特別労務班長という役割を与えられています。その役割は、処刑されたユダヤ人収容者の死体処理です。

わたしたちの仕事の大半は、死んだ人たちのなかで行う作業です。裁ちばさみ、ペンチと小槌、ベンゼン入りのバケツ、レードル、研磨機を使います。

物語は、3人の人物視点による描写が交互に展開して進行していきます。アウシュヴィッツ強制収容所とその周辺の“関心領域”の中で、それぞれの思いが描かれていて、それが相互に微妙に関わりつつも深く干渉しない。それぞれが自分の“関心領域”にこもって大切なことからは目をそむけて生きています。

2023年の映画「関心領域」は、本書を原作とする作品です。第96回アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞しています。

映画は小説と違い、アウシュヴィッツ強制収容所の所長とその家族の生活だけを描いています。トムゼンとシュムルは映画には登場しません。また、小説ではパウル・ドルという架空の人物として書かれていますが、映画では実在のルドルフ・ヘスとなっているのも小説と映画の違いです。

映画で描かれるのは、ルドルフ・ヘスとその家族がアウシュヴィッツ強制収容所に隣接する屋敷で“平和に”暮らしている光景です。明るい陽光に照らされる庭には草木が育ち、子どもたちの遊ぶ声が聞こえる。どこにでもある幸福に満ちた家族の姿です。ですが、その背後には高い塀を隔てて強制収容所の施設が並び、遠くには黒い煙を漂わせる煙突も見える。塀の向こうで行われていることと眼の前にある平和な光景とのコントラストがホロコーストの異常性と残酷さを表現しており、映画を見るものの心に深い恐怖を突きつけています。

私は動画配信サイトで配信されている映画の方を先に見て、そこから原作の小説を呼んだので、そのギャップに戸惑いました。作品の印象という意味では、より想像力をかきたてる映画の方が強く心に残りました。描く対象を絞り込んだことが功を奏しているということかもしれません。




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