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「缶詰サーディンの謎」ステファン・テメルソン/大久保譲訳/国書刊行会-説明不能な本。次々と本筋を外れていくストーリー。いや、そもそも本筋なんてないのだ

 

 

いろいろな本を読んでくると、時に奇妙としか言いようのない作品にあたることがあります。最後の最後まで読み通しても結局どういう物語だったのが理解できなかったことも数え切れないほどあります。

ステファン・テメルソン「缶詰サーディンの謎」は、そうした奇妙な小説です。読み終わって、こうして感想を書き始めていますが、「結局、この本はなんだったのか?」と頭が混乱している状況です。

非常に難しいのですが、頑張ってストーリーを説明していきます。

「缶詰サーディンの謎」は、大きく2部構成になっています。まず第1部、第1章には心に憎しみを持つ男が登場します。彼は首都からさほど遠くない郊外に家族(妻とふたりの子ども)と暮らし、首都にあるフラットで執筆活動を行っている作家です。作家は、週のうち3日4晩をロンドンで働き、残りは村の家で過ごす生活をしています。ロンドンには秘書の女性がいて、作家と秘書はかなり割り切った関係になっています。

こうして、作家を中心として物語は始まっていきます。彼を主人公として、彼の家族や愛人でもある秘書、その他これから登場してくるであろう別の人物を交えてストーリーは展開していくのだろうと考えだした矢先、始まりからわずか10ページにも満たない段階で作家はロンドンから村へ戻る列車の中で急死してしまうのです。

そして、ここから話は四方八方に自由行動を始めることになります。ロンドンのフラットを訪れた作家の妻は、作家の秘書となぜか意気投合して肉体関係を持ち、その後ふたりでスペインのマヨルカ島に向かいます。そこでふたりはペアで踊るダンサーとして認知され、ホテルでは土曜日の夜にふたりが踊る光景が名物となります。

ほら、序盤のこの展開(ちなみにまだ第1章は終わっていません)の時点で先の予測がまったく不能な只者でない感を振りまいているでしょ?

この先もまったく予測不能な展開が続きます。亡くなった作家について調べている青年が、作家の瞳の色を訊ねるためにマヨルカ島の妻と秘書のもとを訪れたところで第1章は終わり、第2章では別の家族(哲学者とその妻と娘)が登場します。哲学者の妻は、自分たちが生きているこの地球は偽物であると信じています。

で、この哲学者の家族がいよいよ物語の中核になる人物なのかと考えたくなるところですが、これまたそういう訳ではありません。この後、哲学者は作家の瞳の色について、作家の友人であった哲学者を訪ねてきた青年とともに黒いプードルに仕込まれた爆弾によって襲撃され、青年は死亡し哲学者は両足を失う重傷を負います。

このあとも、プードル犬爆弾を仕向けたのが亡くなった作家の娘で、彼女がテロリストと思われる仲間と逃亡するとか、両足を失った哲学者は保養のために家族とマヨルカ島に行き、そこで知り合った少年が哲学者の娘に恋していたり、少年の母親がシングルマザーの占い師で少年の父がポーランドの将軍だったり、少年は先天的に心臓に疾患があって結局なくなってしまったりといった微妙につながっていそうでつながっていない話が次々と繰り出されていきます。それは第2部に入ってからも同様で、舞台はポーランドに移るのですが、やはり芯をなすストーリーも主人公と明言できるキャラも現れず、読者を煙に巻くような、わかるようなわからないような話が次々と繰り出されていくのです。

これでもだいぶ頑張って書いてみましたが、自分の中で物語を反芻して書き出してみても、やっぱりよくわからないな、というのが感想です。ただ、よくわからないからこの本がつまらないのかというと、それがそういう訳でもなくて、むしろメチャクチャ面白いのです。

なぜ面白いと感じるのか。それは、次々と繰り出されるエピソードがそれぞれに読者を惹きつける力を持っているからだと思います。そりゃ、すべてのエピソードがひとつ残らず面白いとは言いませんが、ヒット率はとても高いと思うのです。曖昧な感想でよく伝わらないかもしれませんが、「缶詰サーディンの謎」という作品は、数々繰り出され脱線しまくるエピソードのどこに興味を惹かれ、どれだけそれを面白がれるかを楽しむものということです。

時に哲学的な語りが長々と書かれたりする作品なので、読んでいる途中で頭がクラクラするところもありますが、そういう部分はサラッと読み流してもいいと思います。もちろん、じっくり読み込んでも良し。話を深堀りしてみるのもアリですし、行間を読んでみるのも全然アリ(帯で若島正さんが「行間を読んではいけない」と書いていますが)。これだけ混沌とした作品ですから、読む側もカオスに構えておけば良いのです。読書はフリーダム!

頭クラクラしながらもとりあえず最後まで読んでみたら、気になる部分を選んで読み返してみるのもいいかなと思います。若くして亡くなった天才数学少年のイアンが愛しいエマに捧げた愛の論文「ユークリッドはマヌケだった」を読み返して、エマに対するイアンの愛情について深く考えてみるなんてロマンチックかも?(読み返してさらに頭がクラクラする可能性もありますが)

 




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