以下の内容はhttps://s-taka130922.hatenablog.com/entry/2024/08/15/121025より取得しました。


「執着者」櫛木理宇/東京創元社-若い女性を狙うストーカーと殺人及び拉致事件。浮かび上がる共通項。老人の正体そして目的とは?

 

 

執着”とは、ある物事に心を深く囚われて離れられないことを意味します。ほとんどの場合、悪い意味で捉えられるもので、「金に執着する」とあれば、金銭に対して意地汚い様を思い浮かべるでしょう。スポーツの世界で「勝利に執着」したり、芸術の世界で「色に執着」するのは、例外的に良いイメージかもしれません。ただ、この場合は“執着”とするよりは“こだわり”とするべきかもしれませんが。

櫛木理宇「執着者」は、粘着的なストーカーによる恐怖と悲劇を描いたサイコサスペンス小説です。著者は、阿部サダヲ主演で映画化された「死刑にいたる病」の原作者でもあり、ホラーやサスペンスといったジャンルの作品を多数発表しています。本書は、2021年に東京創元社から刊行された「老い蜂」を改題して文庫化した作品となっています。

さる中小企業の事務員として働く友安小輪は、会社に出入りするリサイクル業者としてやってきた岸智保と付き合い始め、彼女のアパートで同棲生活を始めます。彼女の恐怖はそこから始まりました。ある日、彼女の前にひとりの老人が現れます。老人は、同棲するふたりに執拗に不安を与え、嫌がらせを繰り返します。警察に通報もしますが、相手は寂しい老人なのだから優しくしてあげなさいと、事件として真剣に取り扱うつもりはないようです。それに、恋人の智保は何かを隠している様子。そんな日々が続き、やがて智保は小輪の前から姿を消し、老人の嫌がらせ行為も終わります。

同じ頃、杉並のマンションに暮らす若い夫婦の部屋で夫が殺害され、妻が何者かに連れ去られる事件が起きます。当初は、妻が夫を殺害し逃走したとも考えられた事件でしたが、目撃証言などから老人による襲撃事件であり、妻もその老人によって拉致されたことがわかります。

さらに同じ頃、大学院生の丹下薫子は、立ち寄ったコンビニの店内で老人にぶつかられ、卑猥な行為をされそうになります。その日以降、老人は薫子につきまとうようになり、彼女の部屋をのぞいたり、通学のバスで舐め回すような好色な目つきを投げてくるようになります。薫子は意を決して交番に相談しますが、明確な被害もないからと取り合ってくれません。後輩の男子学生に連絡して対応してもらっても、男性相手には老人も強く出ず、後輩も相手が弱々しい老人だから気にしない方がいいと笑うばかり。しかし、その後もストーキングは続き、薫子は精神的にも追い込まれていきます。ですが、ある日老人は「おまえは、あとまわし」と告げ、彼女の前から突然に姿を消してしまいます。

若い女性を狙った2軒のストーカー犯罪と若い夫が殺害され、妻が現場から拉致される事件。その全てに共通するのは、80歳前後と思われる弱々しい見た目の老人の存在です。老人は何のために彼女たちにつきまとったのか。殺人を犯し、拉致誘拐事件を起こしたのもその老人なのか。そもそも、その老人は何者なのか。様々な疑惑が描かれます。

事件を追うのは殺人及び拉致事件の発生した荻窪署の佐坂湘巡査部長と警視庁の北野谷輝巳巡査部長のコンビです。佐坂は、子どもの頃に姉をストーカーに殺害された過去があり、警察官になってからは過去の事件、特に女性が被害者となった事件の記録を読み込んで知識を増やしていることから『事件マニア』と呼ばれています。

佐坂と北野谷は、事件の捜査を進めていく中で、殺された鴇矢享一とその母であるミレイ、そしてストーカー被害を受けていた友安小輪の恋人だった岸智保、丹下薫子に共通する過去の事件へとたどり着きます。それは、佐坂にとっても関係の深い土地で起きた恐るべき事件でした。過去の事件の関係者と現在の事件の関係者が結びついたとき、老人の正体とその恐るべき動機、そして犯行の手口が明らかとなり、不可解に見えた人物たちの行動がスッとつながるのです。

2件のストーカー事件と1件の殺人及び拉致事件。これらに共通するのは容疑者が老人であることです。そして、相手が老人であるということが、事件を見るうえでのフィルターとなってしまっているのがポイントです。老人は弱者である。寂しくて孤独なのだから多少わがままでも優しくしてあげないといけない。ストーカー被害を受けたふたりも、相談した警官や男友達にそう諭されます。でも、相手が弱い老人であっても心理的な恐怖を相手に与えることはできますし、場合によっては暴力的な行動もできるのです。本書は、弱者に対するフィルターのかけ方を見誤ると取り返しのつかない悲劇を生み出すということを描いているようにも思います。

映画でみた「死刑にいたる病」が衝撃的だったので、その原作者が書いた本書はどのような内容なのだろうと興味から読み始めました。帯の惹句に『一気読み必至!』とある通り、読み始めると先の展開が気になってドンドン読んでしまいます。

ただ正直なところ、「死刑にいたる病」をみたときほどの衝撃はありませんでした。確かにグイグイと先を読もうと思わせるストーリー展開や人間の心理や狂気のおぞましさはスゴイと思いましたし、エンタメ小説として面白く読みました。ですが、繰り返し何度も読み返したくなるような作品とは、ちょっと違うかなと思います。

なんとなく手にとって読み始めて、面白くて一気にグイグイと読み進めて、ミステリとしての展開や落としどころもしっかりしていて、最後は面白かったと思って本を閉じる。そういうのが、こういうエンタメ小説の楽しみ方なんだろうなと再確認できた気がします。




以上の内容はhttps://s-taka130922.hatenablog.com/entry/2024/08/15/121025より取得しました。
このページはhttp://font.textar.tv/のウェブフォントを使用してます

不具合報告/要望等はこちらへお願いします。
モバイルやる夫Viewer Ver0.14