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【書評】文学ムック「たべるのがおそいVol.2」(書肆侃侃房)-待望の第2号発刊。今度の特集は「地図−共作の実験」と題する様々なコラボ企画。創作では大前粟生に注目だ

 

 

創刊号で、長く作家活動から遠ざかっていた今村夏子の待望の新作「あひる」を掲載するという快挙を達成し、さらに第155回芥川賞候補になるというオマケまでついた文学ムック「たべるのがおそい」のVol.2が刊行された。

 

Vol.2の特集は、「地図−共作の実験」と題し、3つのコラボレーション企画が掲載されている。

どれも、なかなかに個性的で、そうそうはお目にかかれないような組み合わせである。中でも、円城塔やくしまるえつこのコラボによる創作は、誌面のレイアウトを使って互いのドキュメントが相互に融合しつつ、ひとつの物語を生み出していくような構成になっていて、視覚的な面白さがある。

その他の執筆陣も豪華だ。

巻頭エッセイは、責任編集の西崎氏と日本翻訳大賞の企画・実行を手がけている翻訳家の金原瑞人氏。本にまつわるエッセイをライターの倉本さおり氏と翻訳家の中野善夫氏。短歌を今橋愛氏、岡野大嗣氏、瀬戸夏子氏、吉野裕之氏の4人が寄稿しているし、翻訳小説としてヤン・ヴァイス(阿部賢一訳)とアンナ・カヴァン西崎憲訳)が掲載されている。

前回、今村夏子「あひる」という目玉作を掲載した創作のジャンルでは、今回4人の作家が短編を寄稿している。

津村記久子氏や森見登美彦氏といったメジャー作家の作品も注目なのだが、個人的に今回の注目は大前粟生氏である。

おそらく多くの方は、大前粟生という作家を知らないだろう。ご本人には大変失礼なことだけど、私も今回「たべるのがおそいVol.2」でその作品を読むまでは、大前粟生という作家を知らなかった。

大前氏は(こう書くと大前研一のことみたいだな)、「彼女をバスタブにいれて燃やす」でGRANTA JAPAN with 早稲田文学公募プロジェクトの最優秀作に選ばれて作家デビューを果たした新鋭作家である。 Web上では相当数の作品を発表しているようで、検索するとかなりヒットする。それでも、商業誌への掲載という意味では、本書掲載作がデビュー第2作となるのだろうか。

本書に掲載されている「回転草」は、西部劇とかでよくみる風に吹かれて転がる草というか枝の塊のことで、この物語はどういうわけか身体が回転草に変身してしまった映画俳優(西部劇などで回転草の役を演じている?)の僕が、昔の友人ケンと再会し、彼の家族と出会う中で過去を振り返るという、なんとも奇妙な話だ。カフカ的な不条理小説とも読めるし、南米マジックリアリズム小説的な世界観の作品とも読める。

この短編だけしか読んでいない段階で軽々に評価するわけにはいかないのだけれど、先々に発表されるであろう作品への期待を持たせてくれる作家だという印象を受けた。とりあえず、最優秀作という「彼女をバスタブにいれて燃やす」が掲載されている「GRANTA JAPAN」を読んでみるつもりだ。

Vol.1で長く雌伏していた今村夏子を再び表舞台に召喚し、Vol.2ではまだ知名度の低い若手新鋭作家の作品を掲載して読者の注目を惹く。次はどんなサプライズをみせてくれるのか。明らかにハードルがあがってしまって、西崎氏はじめとする編集スタッフは大変かもしれないが、それだけ期待させてくれる文学ムックなのだと思う。

 

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