中学校校長がイジメ否定の文書を全保護者に配っていた
「本日、旭川市いじめ防止等対策委員会における調査の実施についてご報告をさせていただきました。冒頭私からこの調査に関係する、亡くなられた生徒のご冥福を心からお祈り申し上げますとともに、ご遺族の皆さまに対しまして哀悼の意を表し、お悔やみを申し上げる次第であります。改めまして市民の皆さま、大変多くの方々に多大なご心配をおかけしておりますことに深くお詫びを申し上げます」
5月14日に開かれた北海道・旭川市議会の経済文教常任委員会冒頭。市教育委員会の黒蕨真一教育長が報道陣の前で深々と頭を下げると、無数のフラッシュが浴びせられた。
第三者機関が調査結果をまとめるのは11月
文春オンラインでは、4月15日から掲載し、今年3月、旭川市内の公園で当時14歳だった廣瀬爽彩さんが、凍死した状態で発見された事件の背景には、Y中学校に通う上級生らからの凄惨なイジメがあったことについて詳報を続けてきた。爽彩さんが通っていたY中学校は、これまで「イジメはなかった」と繰り返してきたが、報道を受けて、改めて再調査に乗り出すことを公表した。
5月14日に開かれた委員会で、市教委は、本事案をイジメの「重大事態」として対処し、第三者機関である「旭川市いじめ防止等対策委員会」で調査を実施することを改めて表明した。5月中にも調査に着手し、事件に関係した生徒等へのアンケートや、聞き取り調査を行い、11月末をもって調査結果をまとめるという。
イジメ凍死事件への質問が相次ぎ、会は3時間以上の異例の長さに
経済文教常任委員会は約30分程度で閉会となるのが通例だが、この日は、爽彩さんのイジメ凍死事件に関する質問が市議会議員から相次ぎ、会は3時間以上にわたる異例の長さに及んだ。
煮え切らない市教委の答弁に対して、市議らからの質問は厳しさを増していった。
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13時から市役所の会議室で行われた委員会には、多くの地元メディアや傍聴する市民が集まり、緊迫した空気に包まれていた。
会議は冒頭、市教委側からの報告が5分ほど行われ、続いて市議らによる質疑応答の時間となった。
最初に質疑に立った菅原範明市議からは、「イジメの有無における学校の判断、市教委の対応」についての質問が投げかけられた。
萩生田文科大臣がしっかりと調査するよう指示を促した
「この事案については文春オンラインが隠蔽の疑いがあるとして記事に取り上げました。(4月26日には)参議院においてもこの事案の問題の重要性が指摘され、萩生田文科大臣におきましても真相究明にあたって道教委や旭川市教委にしっかりと調査するよう指示を促したということであります。
世間では学校また、市教委の対応のまずさ、不手際が大きな社会問題となっていたのではないかとの推測がある。
学校、市教委の対応はどうだったのか?」(菅原市議)
それに対し、市教委の担当者はこう答えた。
「当該学校では事案発生後すぐに当該生徒及び関係生徒からの聞き取りを行うと共に、警察の対応状況も確認しております。
当該学校においては、事案発生の経緯や生徒同士の関係性等に関する情報から、イジメと認知するまでには至らなかったものの関係児童生徒への聞き取りの内容や学校の対応状況などについて、その都度教育委員会から報告を受けております」(市教委の担当者)
市教委は改めて、イジメと断定しなかった経緯を述べた。
菅原市議は続けて、こう質問を続けた。
報道と市教委の認識に大きな相違点があるのはなぜか?
「イジメの重大事態の疑いがあるとされ、西川(将人)市長は記者会見において今回、文春オンラインの報道と市教委が認識している内容と大きな相違点があると確認をされておりました。
その認識の根拠となる書類というのは存在しているのでしょうか。
また、今後相違点の事実などをどのようにして確認していくのか」
「本事案に関わり当該生徒や関係児童生徒が在籍をしていた学校が作成をいたしました聞き取りの内容や、指導の状況、警察と連携した内容等についての記録や、当該生徒の転校先の学校が作成をいたしました当該生徒の状況や学校の対応等についての記録がありまして、これらを本事案に対するこれまでの教育委員会の認識の根拠としているものでございます。
教育委員会では各学校からの報告内容をまとめた資料を作成しておりまして、これらの資料につきましては全て旭川市いじめ防止等対策委員会に提出をしてまいりますので、その調査の中で事実関係等明らかにしていく所存であります」(市教委の学校教育部長)
わいせつ画像拡散、自慰行為強要があったが、イジメと認定せず
爽彩さんはわいせつ画像を拡散され、イジメグループから自慰行為を強要された。
続いて質問に立った高花えい子市議はそうした事実があったにもかかわらず、これを今までイジメと認定してこなかった学校や市教委の「判断基準」について疑問を呈した。
高花市議はそのうえでさらに市教委に「イジメの概念についてどう考えているか」と質問した。
「イジメにつきましては、国は当該児童生徒と一定の人的関係にあり、他の児童生徒と行う心理的または物理的な影響を与える行為により当該児童生徒が心身の苦痛を感じているものと定義しており、教育委員会におきましても平成31年2月に作成した旭川市いじめ防止等基本方針において国と同様の定義をしております」(市教委の担当者)
「児童生徒が心身の苦痛を感じていればイジメに該当されるという認識であると受け止めてよろしいですか?
「イジメの理解に当たっては何よりイジメを受けた側の心情に寄り添って判断することが重要であると認識しており、一定の人的関係にある児童等が行う行為により心身の苦痛を感じているものにつきましてはイジメに該当するものと考えております」(市教委の担当者)
「当該生徒が行方不明になられた際には私も早期に無事に発見されることを切に願っておりました。
亡くなられたことは極めて残念でならないことでございます。
これまでの一連の学校、それから教育委員会の対応につきましても調査機関の中で検証していただき、尊い命を救える手立てはなかったのかということを追及していくことが重要ではないかというふうに思っております」
学校や教育委員会の隠蔽体質に対して、3時間にわたって厳しい追及が続いたが、市教委は「第三者委員会の調査」を理由に詳細を語るのを避け続けた。
遺族は「言葉がみつかりません」
6月以降には次の委員会が開かれ、再び旭川14歳少女凍死事件について、議題に上がる予定だ。
爽彩さんの遺族は文春オンラインの取材にこう答えた。
「転校した後に学校がそのような書面を配布していたことは知りませんでした。
(学校側は)どうして嘘をつき続けるのだろうかと思います。
保護者会でも同じでしたが、言えることと言えないことはあると思いますが、イジメのことに関わることはすべて『第三者委員会の調査のため』という言葉で答えないというのは少し違うのではないかと感じています」
事件からは既に2年が経過し、加害者らの記憶は薄れ、口裏合わせや証拠隠滅の危険性もある。捜査権のない第三者委員会の調査で、遺族の理解が得られる検証結果が出せるのだろうか。




