リーガルアドベントカレンダー( #legalAC )Business Law Journal連載連動企画「改正民法(債権法)のリサーチどうやってますか?」
- 発売日: 2020/11/21
- メディア: 雑誌
「企業法務系ブロガー」として、ビジネス・ロー・ジャーナル(BLJ)に書評を連載させていただいているronnor(Twitter:@ahowota)と申します。
さて、BLJ11月21日発売号では、「辛口法律書レビュー(2020年10月)」として、民法(債権関係)改正に伴う参照すべき書籍の変化に対応した、民法リサーチの「ベストプラクティス」を模索しています*1。
詳細は本誌をご覧頂きたいものの、結局本誌記事の内容は、私が個人的に考えたやり方を紹介するにとどまっており、「結局みんなはどうしているの?」という問題意識に応えられていません。(ただ、BLJ本誌記事では、部会資料首っ引きで調べていた人が、部会資料首っ引きからかなり解消されたきっかけになった書籍等を紹介していますので、是非ご覧ください。 #ステマ)
そこで、2020年法務系アドベントカレンダー、 #裏legalAC 企画として、「改正民法(債権法)のリサーチどうやってますか?」というテーマにつてアンケートを取り、その結果を踏まえた、「集合知」を紹介することとしました! ご協力いただきましたツイッターの皆様、誠にありがとうございました!
1.アンケート結果
私の独断と偏見で、多くの人が使っているだろう3種類をリストアップし、後は「それ以外の書籍のお薦めはリプしてください」という形でアンケートをしたところ、173人もの多くの方のご協力を頂きました。心よりお礼申し上げます!
BLJ連載11月22日発売号連動企画として、皆様にご質問がございます。現時点の「改正民法(債権法)」のリサーチはどの書籍をメインで利用されておりますでしょうか。「その他」の方は、リプ等でご教示下さい。回答内容は12月1日の #裏legalAC の中でご紹介することがあります。 #読書 #BLJ #legalAC
— QB被害者対策弁護団団員ronnor (@ahowota) 2020年11月28日
輝ける第一位は筒井・村松『一問一答民法(債権関係)改正』でした。
62.4%(108人)もの支持を得ました。流石、立法担当者解説です。とはいえ、公刊が2018年3月、すなわち、既に2年半以上が経過している訳です。今回の書評記事とアンケートは、ある意味、「そろそろオルターナティブは出ていないのか?」という問題意識に基づくものでしたが、このアンケートでも明らかになった『一問一答』の強さは、逆にいうと、他の書籍の「弱さ」を示唆するとさえ言えるでしょう。
第二位は潮見本で、20.8%(36人)の支持を得ています。具体的には(編著を除けば)、
- 作者:潮見 佳男
- 発売日: 2020/04/01
- メディア: 単行本
新債権総論1(法律学の森)
- 作者:潮見 佳男
- 発売日: 2017/06/17
- メディア: 単行本
新債権総論2 (法律学の森)
- 作者:潮見 佳男
- 発売日: 2017/07/12
- メディア: 単行本
基本講義 債権各論〈1〉契約法・事務管理・不当利得 (ライブラリ法学基本講義)
- 作者:佳男, 潮見
- 発売日: 2017/06/01
- メディア: 単行本
- 作者:潮見 佳男
- 発売日: 2017/08/14
- メディア: 単行本
といった感じでしょうか。
そして、これに大きく差をつけられたのが改正債権法コンメンタール(法律文化社)です。
- 発売日: 2020/10/05
- メディア: 単行本
6.9%(12人)でした。2020年に公刊された改正債権法の卓上コンメンタールということで、それだけを見ると、『一問一答』に代わるオルターナティブになりそうなところですが、残念ながらあまり人気がなかったのは本誌連載記事にも記載した、「共著リスク」のせいでしょうか。ただし、「改正債権法コンメンタールを足掛かりに、部会資料にもぐったりしております。」という声も上がっており、リサーチの「足掛かり」としては使えるものの、これだけでリサーチが完結しないのが不満という感じなのではないでしょうか。
基本一問一答です。NBLの立案担当者連載もたまに一問一答に書いてないことが書いてあったりするので、一問一答にないときは、読みます。
— かっぱちゃん@ザンギ弁護士 (@kappa0909) 2020年11月28日
改正の経緯を少しみたいときは、潮見先生の赤い本や最近では改正債権法コンメンタールを足掛かりに、部会資料にもぐったりしております。
たしかに債権法コンメンタールはいまだすにしては薄すぎると思いました。思いきって三分冊とかにして、改正せずに終わった議論のうち、今後の解釈に参照できそうな議論をモリモリいれた方が売れたきはします。
— かっぱちゃん@ザンギ弁護士 (@kappa0909) 2020年11月28日
2.個別コメント
私が挙げた3種類以外の「自由記載」として、コメントを比較的多く頂いたのは、日本弁護士連合会『実務解説 改正債権法 第2版』(弘文堂)及び中込一洋『実務解説 改正債権法附則』(弘文堂)です。
- 発売日: 2020/03/12
- メディア: 単行本
- 作者:中込 一洋
- 発売日: 2020/03/12
- メディア: 単行本
弘文堂が日弁連の債権法改正ワーキンググループと提携して頑張っているという感じですが、個人的には、著者が、審議会の弁護士委員をバックアップするメンバーとして、確かに立法には関与しているものの、さりとて、立法担当者ではないという立場であることが逆に中途半端になっている*4という印象をもたなくもありません。
中田裕康『債権総論第4版』(岩波書店)や、道垣内=中井『債権法改正と実務上の課題』(有斐閣)もリサーチに使うというご意見がありました。
- 作者:中田 裕康
- 発売日: 2020/10/09
- メディア: 単行本
これらは私も個人的に『一問一答』と併用しております*5。
例えば、債権法改正と実務上の課題の中では、譲渡制限特約違反を理由とする解除や損害賠償規定は定型約款の不当条項にあたるのでは、等一問一答の記載を足掛かりにした議論が多く興味深いです。デスデス。
— かっぱちゃん@ザンギ弁護士 (@kappa0909) 2020年11月28日
それ以外には、鎌田薫他『重要論点 実務 民法(債権関係)改正』や平野裕之『新債権法の論点と解釈』(慶應義塾大学出版会)は、私個人としては、あまり使っていなかったのですが、たしかに「とっかかり」という意味ではあり得るかもしれません。
- 作者:平野 裕之
- 発売日: 2019/01/25
- メディア: 単行本
更に、『一問一答』が出た後の立法者見解の補足としてNBL立案担当者解説 民法(債権法)改正の概要(1106号*6〜)及び「債権法改正に関する経過措置の解説」(1156号*7 〜)が参考になります。本誌は「書籍」の評釈であったので割愛しましたが、確かに、『一問一答』の補足になります。
加えて、大村敦志・道垣内弘人『解説 民法(債権法)改正のポイント』(有斐閣)も挙がりました。
- 発売日: 2018/06/15
- メディア: Kindle版
結局、新注釈民法シリーズが出るまでは、このような「多数書籍併用」で行くしかないのではない、ということではないでしょうか。
3.そもそも某出版社のコンメンタールがもっとしっかりしていれば…。
ここで、何度も繰り返していますが、私は債権法改正まで、『我妻・有泉コンメンタール民法 総則・物権・債権』を使っており、確かに最近の同書には最新の情報の変化に改訂が追いついていない部分等アラもあったものの、法務パーソンが机上に置いてパッと参照するものとしては最高だと思っていました。ところが、Business Law Journal2019年11月号本欄で苦言を呈した通り、最新版(第6版)が2019年に発行されたにもかかわらず、改正条文については、ポイントと称して一問一答の情報量にも満たない情報が記載されるにとどまっており、これでは改正法のリサーチには使えない訳です。
それ以外にも同出版社はタイトルに「コンメンタール」と付く書籍を複数売り出しており、これらが実務のリサーチに本当に使えるものであれば、こんな悩みは必要はなかったはずです*8。同社は本当に良い本を多数出されており、極めて優秀な編集者も多数いらっしゃると承知しているので、奮起*9 に期待したいところです。
最後に、アンケートやリプの形でご協力いただいた皆様、誠にありがとうございました!!
*1:はい、そこ、「顧問弁護士の先生に頼めばいいんじゃない?」という答えはNGです。全てを顧問の先生にリサーチを頼むことができず、法務パーソンが自分でやらないといけないことを前提としています!
*2:ただし、『一問一答』が出た後はあまり使われなくなっているのでは
*3:ただ、法学部の学生用の教科書という印象が強い
*4:いっそのこと、「一人の実務家」としてクライアントにどうアドバイスしているか、「踏み込んだ私見」を示します、という方向に振れた方がむしろ特色が出ていいのでは、とさえ思う。
*5:中田契約法が早期に改訂されると、中田シリーズで、「通し」で改正債権法の範囲を概ね網羅できるので、有用性は上がりそうです。
*6: https://www.shojihomu.co.jp/nbl/nbl-backnumbers/1106-nbl
*7:https://www.shojihomu.co.jp/nbl/nbl-backnumbers/1156-nbl
*8:なお、私はいわゆる「新」や「基本」等は、「学習用」コンメンタールとして売っていると理解しており、学生の学習用コンメンタールとしての意義を否定する趣旨ではありません。