『ジャグラー/ニューヨーク25時』を観てきました。
ずっとソフト化も配信もされないので半ば伝説化した作品でもあるという噂を聴いて、「なんか楽しそうだから行ってきましょう」と赴いたのでありました。
娘の15歳の誕生日に目の前で誘拐されたトラック運転手のショーンは、元警察官の経験も生かして自力で犯人の追跡をはじめる。犯人はサウスブロンクスで貧しい暮らしをする青年。自分の幸せだった時代を奪ったのは富裕層であると感じ、銀行家の娘と間違えてショーンの娘キャシーを攫ったのだった。人違いだと言っても理解してもらえないキャシー。ショーンは行く先々で手がかりを求め、普段は触れ合わない街の人達や私怨で頭がおかしくなってる元同僚たちと交流する。やがて犯人の計画を突き止めたショーンは単身犯人の元に赴いていく……というようなはなしでした。
要は、「娘がさらわれたので父ちゃん頑張るモノ」なんですが、街のいろんな人に触れ合うことによって、ヒントを得たり邪魔されたりするっていう、ドラクエみたいなことになっていくんです。娘がさらわれるという非常事態になるまではおそらく漠然と”街の風景”というふうに捉えていたであろう市井の人々が、必死さを持って向き合わざるを得なくなることによって、一気に立体的に世界が広がっていくという感動があります。
土地柄そのものが再開発の大きな矛楯を抱えた状態で、みんな生き抜くのに精一杯。まわりの人のことなど気にもかけていられない都会の風景。その中をとりわけ特権階級の側である屈強な白人男性のショーンが、血相変えて走っているのを、人々がどう受け取るか。
何しろ娘が攫われてるのにどこからも助けがこないという点では手の施しようもなく気の毒なショーンなんですが、ずっと「権力側」の警察官と生活してきた素振りが身についている立場であるわけです。
いったんタコ殴りにされてからやっと助言をもらえたり、親切にしてくれる一方で「そんな偉そうな態度だったら絡まれるよ」と知恵をさずけられたり、古巣の元同僚が明らかに一番やばいヤツだったり。普段触れ合わないタイプの人と一瞬触れ合って全力でコミュニケーションを取ることがいかに世界を拡張するか、その手際が大変に多彩で面白い映画です。
あと、単純に身体能力高そうな人が一生懸命走ってる姿はなんとなく人を幸せにさせるものなんである。
シンプルでとっても楽しい映画でした。