『エディントンへようこそ』を観てきました。
ニューメキシコの田舎町エディントンで保安官をしているジョーは、折からのコロナ禍に、マスクを着ける着けないで現職市長と大喧嘩。うっかり次期市長選へ立候補することになってしまう。疫病への不安の中でSNSを通して陰謀論が拡散、もはや誰が誰と何の喧嘩をしてるのかわからなくなるほどまたたく間に街は分断されていって……というような話でした。
エンタメ映画はだいたい「この人の視点に乗っていけば大丈夫だな」という人物が明確なものですが、『エディントン~』は登場人物が基本的に全員おかしくなっているので、誰のコックピットで世界を眺めても全部しっくりこない、という状況での2時間半でした。居心地はよろしくないけど
「コロナ禍ってこんな感じだったなあ」
という感覚も、大変リアルに思い出します。
マスクとか、PCR検査とか、ソーシャルディスタンスとか、具体的な出来事も描きこまれてはいますが、全体の世界の空気感としての”コロナ禍”がちゃんと映像に写っていたのはすごいことだな、と思いました。
全員がSNSでたまたま目にした情報を「自分が見つけた」と思い込み、「自分が見つけた情報のほうが、あなたが見つけた情報より正しい」と最初から決めて話をする。
コメディとして観ると大変滑稽ですが、自分も含め、全員が実際そうだったし、あれ以来その問題はまったく解決に至ってないことを思い出しますね。つらい。
あとは、コロナ禍とは関係ないと思うのだけど、妻とか義母か、女系の系譜にやっぱり支配されてしまうところがアリ・アスター独特の作家性で面白かったです。
「コロナがテーマでもやっぱりそうなっちゃうのかっ!」
っていうのは、もはやちょっとおもしろいので、このままずっと行って貰いたい。
コロナと並ぶテーマとしてBlack Lives Matter運動が非常に歪んだ拡散のされ方をした、ということも描かれています。日本に居た実感としては、BLMのムーブメントの方はたいして入ってこずに、それに対するバックラッシュの方だけが輸入されてきた印象があったので、「BLMとか言ってる若者大丈夫か?」みたいに受け取れる描写を観るとなかなかに胸が痛いものがありました。しかし、この伝わりにくさもたぶん、わざと。
ホアキン・フェニックスを2時間半くらいひどい目に合わせ続けると超面白い、と思ってしまった謎の映画監督アリ・アスター。2時間に収めてくれたほうがありがたいけど、やっぱり私は全然嫌いになれないのでした。
