『ブラックドッグ』を観てきました。
”中国ノワール”という触れ込みと、カンヌ映画祭の「ある視点」部門の受賞作というので、暗くてなんとなく曖昧に終わる感じの映画かしら?
なんて思いながら観に行ったんですが、大変に楽しい映画でした。
服役して故郷に帰ってきた青年がいるんです。彼が全然喋らない。どれくらい喋らないかというと、一作目の「ランボー」くらい喋らない。
本人が喋らないものだから彼がどんな過去を背負った人なのかもランボーと同じくらい、かなり後になるまで明らかになりません。
ところが地元の人は「おお、ラン。帰ってきたのか」という感じで、誰もこのラン青年を警戒しないし、犯罪者ではあるはずなのだけど愛されてるっぽいのです。

喋らないから軽く扱われることもあるものの、いろんな才覚のある青年だということが徐々にわかってきます。しかし彼にはケアしなければならない人がおり、優しさゆえに将来のない土地に縛り付けらていることも判明。『ギルバート・グレイプ』ですね。
ここで何が面白いかっていうと『ランボー』と『ギルバート・グレイプ』の間に、異類婚姻譚の味わいがひゅっと入ってきてるところが、
「うーん、そうか。なるほど中国はでっかいからそういうこともあるのかな?」
っていう気持ちになったりして、すごくいいんです。
「あのとき助けてもらった犬でございます」
っていうおはなしは、ほぼ問答無用で人の心を打つではないの。たまらん。
外から新しい価値観を持ってやってくる女性と、マイノリティであるがゆえに独自の交流を持ってしまった境界線に暮らす犬とが、ラン青年の人生を一歩前へ進めます。
青が美しいスチールを見ると「うーん、もう一回観たいな」と思う、素晴らしい映画でした。
