発売時からずっと気になっていた『世界99』、「読みたい、高い、読みたい、高い」というのをずっとやっていたらKindleのセールのポイント還元で半額になってたのでやっと買えました。
Kindleで買ってしまったので物量としてのボリュームがよくわかっていないのですが、長い小説です。長い上に、『1984』めいたディストピアものでもあるんですが止まらなくて、読み終わるまで寝不足。
先日ダガー賞をとった『ババヤガの夜』といい、それと競って日本より英国で多く売り上げた(らしい)『BUTTER』といい、『世界99』といい、自分と同世代の女性の作家たちの小説が近年いくらなんでもおもしろ過ぎる。
いや、なんか生きてて良かったよ。
私が生きてきた社会って、本当にあったんだなあ、一貫して公の場ではないことになっていた、あんなこともこんなことも、本当にあったんですね?と思いつつ。
その一方で「とはいえ、さすがにそんなやつはいないだろ」と思わせる不気味なユーモアセンスに圧倒されて、バッドに入る暇もなかったのでした。
何がもっとも堪えたと言って、主人公の空子が幼い頃から家にいる母親を「便利家電」だと思って、軽蔑しつつ、便利に使いつつ、自分はああはならないように作戦を練るところなのでした。
私も、母が死んで以降存在を認識できるようになった「団塊世代の母親と団塊ジュニア(氷河期世代)の娘の間で避けがたく起こるアレ」なんですが、「便利家電としてのお母さん」と言われてしまうと、あまりにも的確で身も蓋もなくて即物的で、かつユーモラスで、心の膝が崩れ落ちるのでした。
母はもう亡くなったのでこちらも適当に記憶改ざんして、なんとなく一応落とし前つけてしまっているけど、私も母は便利家電であり、ほとんど人間じゃないと思っていたもんです。だって”そうしていい世の中”だったし(今でもだけど)
そして母のほうでも、自分の方が頭がいいと思い込んでいる上から目線の娘(私)がいずれひどい目にあえばいいと、いろんな伏線を張って囲い込んでいたのもまた事実。加害と被害はあざなえる縄で、個人のレベルで解きようもない確固たるものなんでした。
あったよね、そういう社会本当にあったよね。気のせいじゃなくて良かった良かった。
マルクス・ガブリエルが『新実存主義』を言っていた頃に、「世界はスクランブル交差点みたいなもので、個別に世界を持ってる人たちがたまたまここに集まっているが、これで何も問題ないでしょ」というようなことを(たぶん)言っていたのを印象深く記憶していたんです。
「言ってることは分かるけど、だからなんなんだろう?」みたいな感じだったんですが、『世界99』を読んで「おお、これか」と思いました。
世界がいっぱいあってみんな出入りしながら暮らしている。
そんなわけで最近読んでハマった同世代女性作品一覧
ババヤガになりたいですね。容貌魁偉で人から恐れられて気難しいけど、適切に対応されると人を助けないでもない存在。最高。
「ババヤガの夜」といっしょに再読したらすごく面白かった。女性がバターをたっぷり食べるだけでざわつく世の中。あるよねー。
コンビニ人間の芥川賞受賞は2016年でした。「なんかとんでもない作家がいるんだな」と感じたのを思い出す、あれから9年か……