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『ババヤガの夜』 ~誰が姫を助けるか問題

 

少し前に英国ダガー賞を受賞して話題になっていた『ババヤガの夜』電子版が結構安くなっていたので読みました。

一気に読んじゃう系。どんどん読むうちに最後のページで「えっ、もう終わっちゃうの?」となる小説でした。エンタメっていいもんだね。

 

タイトルになっている”ババヤガ”っていうロシアの森に住む魔女が、私はまた好きなんです。人に嫌われ、混乱をもたらすことによって秩序を再構築する老婆です。

本作品中のババヤガの説明のくだり。

 

私は鬼婆の話が好きだったよ」 「怖い話?」 「ちっとも。その鬼婆は、面白い家に住んでるんだ。森の奥にあって、鶏の足が生えてて、地面から床が物凄い離れてる。だから普通の人は入れない。鬼婆はそこを人間の骨で飾ってる」 「怖い話じゃない」 「鬼婆にとっては普通のインテリアなんだよ。そこで、人を拐って食ったり、家畜を呪ったりして生きてる。なんでも知っていて、なんでもお見通しで、魔法が使えて凄く強い。村人には怖がられてる。でも、心のきれいな優しい娘が丁寧にお願いすると、宝物をくれたり仕事を助けてくれたりする」 「悪者じゃないの?」 「悪いこともするしいいこともする。畑を焼き払ったりもするし、純真な娘が王子様と結婚してお姫様になるのを助けたりもする。鬼婆が何をするか、敵なのか味方なのか、出てきた最初は分からないのが、鬼婆話の面白いところ」

王谷晶. ババヤガの夜 (河出文庫) (p.63). 河出書房新社. Kindle 版. 

 

硬直した秩序を持つヤクザ世界に混乱をもたらすものとして”純粋に暴力好きな大女”である新道依子が連れてこられます。いくらエンタメとはいえ「それはさすがにカリカチュアしすぎだろっ!」ていうレベルのマッチョ野郎しか住んでいない社会。

そんなところに男より大柄で喧嘩の強い女が居ては男の存在意義に関わるから、もちろん本能的に全員に嫌われるのだけど、「お嬢様の用心棒」としてどうしても腕っぷしの強い女が必要なので、嫌われつつそこに住む羽目になります。

一方で、その大女が守るべき”お嬢様”は、マッチョ世界を生き延びるべく過剰適応した「男社会を絶対に脅かさないようにチューニングされた過剰に非力な娘」です。お膳立て、完璧。

 

女性のアクションものって、今や映画あたりにはたくさんありますが、どうしても男性と同じことを、見た目だけ女性の人物がやっている、という形になってしまいます。

スカーレット・ヨハンソンフランケンシュタイナーはとても魅力的だけども、「それは本当に女性のアクションエンタメなのかい?」という疑問に関してはなかなか難しい。

 

一方で、『ババヤガの夜』の新道依子は見た目こそ男性より大きくて強いものの、生理に左右されるバイオリズムと、なんらかの手段で拘束されてしまえば性暴力によって尊厳を踏みにじられうる肉体を持ち、そして明確な女性嫌悪のある社会の中で暮らします。つまりは、本当に女性の肉体を持っている。

 

そして”男性性競争社会”で生き延びるべく不毛な努力を続けるしかないお嬢様を救うのは、男性性で最上位の”王子様”の承認ではなく、価値序列の埒外にいる”老婆”役の女性であるというのは、なんという爽快感。リアリティ。

 

  • デビッド・ハーバー

ビジュアルで見るババヤガといえば、不発に終わった2019年『ヘルボーイ』です。

鶏の足の生えた小屋も、不気味なインテリアもしっかり作ってあったし、ババヤガ本人も臼から出てくるという由緒正しい登場をしていて大興奮でした。続編ではもっとフィーチャーされる予定のポストクレジットもついていたんですが、制作されることなく闇に葬られてしまいました。面白かったと思うんだけど、そんなに不評だったのか?

 




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