『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』を観てきました。
これは最初にスチール写真を見たときから大変気になっていた作品。
何が気になるかって、ヒロインが、ウェディングドレスを着ているんです。
となると想起されてくる物語はシンデレラなんですが、よく見ると彼女は足元が赤いスニーカーを履いています。
「これは今度こそ遠くまで行けるシンデレラ物語が来るんじゃないか」と思ってだいぶ期待が盛り上がったわけですね。

最初からそういう視点で観ていくと非常に興味深いエピソードが多々ありました。
『愛染かつら』あたりから連綿とある”愛ゆえの疾走”のシーンとか。
疾走のシーンって非常に効果がある表現方法だけど、そもそもあれって別に「恋愛対象の異性のために走るから」感動してるわけじゃないよね?自分を抑圧してきた人が大切なもののために勇気を出す瞬間だから心打たれるんだよね?
という”そもそも論”を、一見ロマンスもののようなルックの中でものすごくしっかりやっていたことにはよくぞやってくれた、と思ったもんです。
あと、やっぱり靴の使い方。心を表すモチーフはずっと靴です。大学時代から好きだった赤いスニーカー。就活で履くつまんない靴。間違えたパートナーから逃げ出すときは裸足。結婚式のときにちゃんと好きな赤いスニーカーに戻っているヒロイン。一方で、好きな人に靴を届けたいのについに届けられなかったヒーロー。
ロマンス映画をちゃんと好きであろう人が作った、ロマンスの表現方法の中で何を描けるかという野心がとてもおもしろかったです。
その一方であえてロマンス映画の枠組みの中で、恋愛関係ではない二人が親密になっていく物語をやろうとすると、ふたりの関係性の他に、ヒーローとヒロイン、それぞれ二人の自意識の成長過程をやらなければならないことになるので、エピソードがすごく増える、という弱点も発見することにはなりました。
「非常によくできた映画だとは思うが、なんとなく長い」
という印象を持ったのもまた正直なところ。
本来はギュギュギュと情動を濃縮するのに向いているロマンスの表現方法と、それぞれ別個の自意識の成長物語がどれくらいうまく噛み合うかというと、まだもうちょっと試行錯誤の余地のあるところなのかもしれない。
しかし、大変たのしめた映画でありました。
ウェディングドレスも、好きな人はどんどん着るべし。しかし相手がトンデモないま違いだったときにいつでも逃げ出せるように、ちゃんと走れる靴と、自分を見失わないための好きな色は、決して諦めてはいかんのだ。
やっぱり原作物でした。小説だったらもっとうまく収まりそうなエピソードはたしかに多かった。