『サブスタンス』を観てきましたよ。
おっぱいおっぱい言うおじさんがひどい目に遭う話だったので私としては大喝采。
上映時間142分。
予告を観るに「2時間半かけてやるネタではないだろう」という気がしたものですが、最後の最後まで「こんな展開になるとは思わなかった!」ということをずっと思わせ続けてくれる映画、ということで素晴らしかったです。
「デミ・ムーア綺麗だなあ」からの「ここまで頑張るのか。アカデミー賞ノミネートもするよね」からの「こんな映画なの?」からの、永遠に続く阿鼻叫喚ですね。
デミ・ムーアが”歳のわりに若くて美しい”を頑張っている間はつらそうだったのが、”どこに出しても恥ずかしくない立派な老婆”になってからは魔女のごとき生命力と行動力を発揮して本当に素晴らしい。
自堕落に暮らし、チャラい若者に文句をいい、好きなものをたくさん食べて元気をつけ、誰のことも恐れない。
「あなた今たぶん人生で1番幸せだから、そのまま暮らして、若者に嫌味を言いつづけなさいよ」
って願ったものですけど、そこはジレンマに引き裂かれているからこそのデミ・ムーア。

知性ゼロのプロデューサーごときの言う事に自尊心を傷つけられてしまうのは、プロデューサーの口から出てくる言葉がしっかり内面化してもいるからです。
数十年ぶりにばったり会った同級生の”さえない中年男”に声をかけられて、内心「自分はこのレベルの男に誘われるまで価値が下がったのか」という気持ちも持ったのであろうデミ・ムーアの中に巣食ったルッキズムを打ち負かすチャンスはいくつもあったんだけど、ブルードーザーみたいにどんどんジレンマ街道を驀進してしまったのでありました。
「そこだ!今だ!幸せになるんだ!」と思った分岐点はことごとく素通りされてしましたが、しかし彼女はよく頑張った。
ここ数年観たなかで最大のボディホラー度と血の量となりましたが、良い結末だったなあ、と思うのでした。
「なぜ男性にこんな映画が撮れたんだ」と思いながら観てたら、コラリー・ファルジャさんって普通に女性監督でした。血まみれスプラッターなんだから男性が撮ってるに違いないという、私のジェンダー・バイアスがはしなくも露呈した瞬間であった。