『エミリア・ペレス』を観てきましたよ。
見始めてから「あ、これミュージカルだったんだっけ」ってちょっとびっくりしたくらい、こういう世界観のものをミュージカルで観る経験ってあまりなかったような気がします。
頑張っておりました。主演女優の特異な存在感もよかったし、逆に”幸薄そうな普通の人”として存在感を薄めたゾーイ・サルダナのほうれい線も色っぽかったし、「なんかこの人やけに華があるな」と思ってたらセレーナ・ゴメスだった元妻も良かったし。
しかし、画面暗すぎない?
全体に画面を明るくするだけで面白さ3割増だったと思うのだけど、なんかずっと見難いまま時間が過ぎていってしまった気がするのは残念。
性別違和の麻薬王でロミオとジュリエットをやろうとした企画の熱とか、難しいテーマをちゃんと成立させた頑張りとか、すごく好感を持った一方で「もっと面白くなったんじゃないか、これ?」という、ひっかかりもあったことはあったんです。
あと、長い。120分におさめて欲しい。
人生に大きな秘密を抱えたまま非道なやり口で麻薬カルテルでのし上がった主人公が決死の覚悟で、家族を捨てて偽装死を選んでまで、性別適合したわけです(身体だけじゃなくてついでに顔も変えたところがSF感あってちょっとおもしろかった)
新しい人格として社会からも受け入れられて幸福な人生送りました、めでたしめでたし。なのかな、と思ったら自分の中に流れている最悪のマチズモによって、死ぬ思いで手にいれたすべてを失くすのですよね。
あ、そうなんだ。結局は力の論理によって人を操ろうとするのがこの人の本質だったのか。って鑑賞者もびっくりするし、エミリア本人も驚いた瞬間だったのでしょう。
あの瞬間が、言い訳の余地なくエミリアが全部悪いんだけど、なんだか非常に切ない風が吹き抜ける瞬間で、良かったです(もちろん被害者は一方的に元妻セレーナ・ゴメス側ですが)
劇場ポスターなどでわかる通り、主人公は3人の女性です。
ひとりはトランスジェンダーの元麻薬王で、せっかく望む人生を手に入れたのに幸せを壊した人。
もうひとりはその元妻で、大金持ちと結婚したうえに莫大な遺産までもらった一方で、自分の人生に何が起こっているのかを一度も教えてもらえなかった不幸な人。
3人目は、優秀な弁護士なのに、女性であり肌が黒いという理由で将来に何の見込みもない女性。
全員強い女性なのに一人も幸福にならなかった話です。しかし異様な熱量があるので、そのわりにはあんまり辛い気持ちにもならないまま帰って来られたのは良かったです。