近頃、起きるとうちの猫がサキュバスみたいになっている。近い。
寝るときは脚の間あたりにいるのに、朝、退屈度が増すに連れてどんどん顔に近づいてきて、しまいには鼻息を掛け合いながら目をさますことになる。変態か。

朝から暇を持て余したサキュバスはプランターに顔を突っ込んでしきりに生えてきた草を食らう。肉食の動物ゆえ、栄養素としてそれほど草に興味があるわけではないが、なにしろ、毒ではないし、毎日伸びてくるのが面白いらしく、基本的に草は好きなのだ。

私が食べようと思って買ったのに、ほとんどむしり取られて何もなくなってしまったベビーリーフ。あんまり好きではないけど、じゃれて歯型だけついているサニーレタス。まったく興味を持たれないのですくすくと育つパセリ。
その間に、スーパーで買ってきた野菜の根っこを植えておくと、それらもちょっとずつ生えてくる。大根の葉、青梗菜の根本、レタスの根本。サラダになるほどわさわさ生えてきてくれるわけではないが、ただ捨てられていくはずだった部分から小さい葉っぱが出てきては育っていく風景は大変楽しく、毎朝観察している。
私を起こし、一緒に菜園の見回りをしたあとのサキュバスはすっかり満足して、ひとしきりバタバタ走り回ってから無印の身体にフィットするソファミニの上に二度寝をしに行く。先ほどまでのはた迷惑な騒ぎはなんだったのか。
「いったいどうやったらあんなに自由自在に暮らせるもんか」
目覚めのコーヒーを啜りながら薄目で見やるが、よく考えればこちらだって、あんなに自由自在に暮らせない理由もないような気がする。
丸くなっている我がサキュバスの腹のあたりに顔を埋めてみればバリバリバリバリと小型エンジンのような音を立てて、彼女はまったくよく眠る。