近頃読んでいる本。

しばらくデビットカードが止まっていたせいで電子書籍を買えない日が続き、物理的な積読の消化をしていた。無いつもりでもあるのが積読。
ジョン・ウォータズがヒッチハイクの旅に出る本である。全然何の関係もない私でさえアメリカじゅうに顔の割れている66歳の映画監督がヒッチハイクしない方がいい理由は無限に思いつく。だってあの国、いたるところに銃があるし。ゲイフォビアの強い地域もいっぱいあるし、有名人の誘拐事件もよく聞くし。
私がおもいつく「絶対にやめた方がいい理由」は、本人とスタッフたちは当然嫌ってほど考えさせられているわけで、じゃあ何のためにやるかと言えば、クリエイティブな老人であるためにただ新しい選択と行動を起こす必要があったから、ってことになる。あらやだかっこいい。
本の章立てがまた良くて、まずはフィクションとして想像上の「最悪の旅」「最高の旅」を書いたあとで、「現実の旅」の記録が続く。
意外なのは、3つの旅の中で「どれが一番おもしろい」というような序列がつけられないことだ。最高だろうと最悪だろうと現実だろうと、未知に満たされていてその中で人が右往左往している限り全部おもしろいのだ。
やってみるにあたって、「もしかして」「なんちゃって」を生きたあとで、現実の記録ももちろん残してみるという手法に、自分の人生とフィクションの間をつなぐすごいヒントを見出せる気がして、だいぶワクワクした。
ジョン・ウォーターズはこれまで成し遂げたことの量が多いから、奇抜さにおいて大掛かりになっちゃってるけど、凡人としてはヒッチハイクまでしなくても、ちょっと変なことするだけで、精神のアメリカ横断ヒッチハイクは可能だよな、と思えるありがたい読書だった。
ところでジョン・ウォーターズ、「悪趣味を生業としてセレブになるなんて立派な人じゃないかっ!」と大変感心するものの、映画の方はほとんど観たことがない。紙の本で読む分には人体からいろんな体液が出てきたりするのもわりとなんとかなるが、こちとら映像で見るほどの度量には正直欠けるのだ。つまらない人生に固執する保守的な価値観を持つ人間としてできる範囲で頑張るのみである。
この本もお気に入りで、中にたくさん落書きしながら育てている。