連休前日の5月2日の夜は快晴。ここしばらく強かった風も穏やかに。しかし上弦を過ぎた月が深夜まで出るので DSO は撮れないし惑星はシーズンでない、となるとテスト撮影日和ですよね、ということでベランダにて先日の Star Adventurer GTi のテストの続きです。
「その1」はこちら。
実は4月1日、4月4日、4月10日にもオートガイド撮影のテストをしていましたし、この日も深夜からオートガイド撮影のテストの続きをやっていましたが、そのあたりは後日まとめるとして、まずは月面の撮影について。
結果から先に行きましょう。FSQ-85EDP + ASI294MM Pro + GSO 2インチ2X EDレンズマルチバローでの撮影です。フィルターはシーイングの安定と色収差の回避を狙い*1 ZWO Ha Filter を使いました。
![月 (2023/5/2 21:39) [Star Adventurer GTi + FSQ-85EDP テスト]](https://live.staticflickr.com/65535/52872232023_088bda69c4_c.jpg)
カメラの向きは天の赤道に水平で画像回転処理はナシです。シーイングは大きなゆらぎはあるものの泡立つような細かい揺れは少なく比較的良好でした。風も穏やかで風で像がブレる感じはなかったです。画像のリンク先の flickr のページで画像を2回クリックすると等倍まで拡大できます。光学性能の限界まではあと一歩な気がしますが(ピントが追い込みきれてなかった?)これだけ写れば問題ないと思います。
FSQ-85EDP を Star Adventurer GTi に載せるに当たってはいくつか工夫が必要でした。
- バランスウエイトはビクセンの3.7kgを使用。
- ウエイトシャフトは直径20mmでビクセンのものがそのまま使えます。
- FSQ-85EDP, ASI294MM Pro, EFWmini, ガイドスコープ の一式を載せてシャフトの端いっぱいまでウエイトを下げてなんとかバランス。
- シャフトの端の方には穴があいている(レンチ等を差し込んでシャフトのねじ込みに使う用?)ので、ウエイトの固定ネジが穴にはまらないよう注意。
- ウエイトの上下は穴が狭い方を下にするのが吉。
- シャフトのウエイト落下防止ネジの径がウエイトの広い方の穴より小さくてシャフトの端を越えて滑り落ちてしまうので。
- アリミゾの固定ネジをビクセンのプレートホルダーSXのものと交換。
- 元の固定ネジはノブが細くて強く締め付けるのが難しいので。
- 少しガタがありますが使えます。
- 元の固定ネジもガタがあるのでネジ径・ピッチは合っているようです。
- 三脚との接続にはユニテックのテーパーキャッチャーとアダプターを使用
- 必須ではありませんが、三脚の脚の向きと極軸の向きを合わせるために使いました。
- 重量のある機材を搭載すると北側に重心が偏るため重心が脚の上に乗るように向きを調整します。
- 三脚側に調整機能があるか、たまたまねじ込んだ時に向きがいい具合になっているなら不要です。
- 重量のある機材を搭載する場合、テーパーキャッチャーの固定ネジは六角レンチによる締め増し必須。
- 必須ではありませんが、三脚の脚の向きと極軸の向きを合わせるために使いました。
組み上げた機材はこんな感じです。別の日のテストの時に撮った写真でバローレンズが付いてないですが、それ以外は同じ構成です。*2
鏡筒と鏡筒バンドとカメラ一式の重量は約6.1kg *3 で、搭載可能重量が最大5kgまで(ウエイト含まず)の Star Adventurer GTi にはかなり荷が重いです。
ちなみに赤緯軸の鏡筒を取付け用のアリミゾ回りの部品はスカイメモS*4 の極軸の部品(雲台や赤緯ユニットを取り付ける部分)と同じもののようです。スカイメモSの搭載可能重量は最大5kg(赤緯ユニットを付けた場合はウエイトを含む)なので、Star Adventurer GTi の搭載可能重量はこの部品の強度(おそらくアリミゾの固定力)に由来するのかもしれません。
三脚はカメラ三脚で Manfrotto 055XDB です。今調べたら耐荷重7kgなので大幅に過積載ですね… このタイプの三脚はセンターポール回りが脆弱なので、本来はセンターポールのないタイプがいいと思います。
ユニテックのテーパーキャッチャー & テーパーアダプターについては、いくつか心配事があります。
テーパーアダプターは太ネジのバージョンで、Star Adventure GTi に取り付けるとこんな感じ。
土台の肉抜き部分のリブに荷重がかかる形になって少し不安です。実際に使ってみて不安定さは感じませんが長期的な耐久性はわかりません。間に金属板を挟むといいかもしれませんが、アダプターのネジの突出量が7mmであまり厚い金属板を挟むのはマズいかも。カメラ取り付けネジの規格(ISO 1222)でネジの突出量は4.5mmと決まっているようですが、三脚の雲台取り付け用のネジはもう少し突出しているものが多いような?
もう一つ心配なのがこれ。
テーパーアダプターはカメラネジ1点止めなので、回り止め用にイモネジが付いています。が、架台側の肉抜きのせいでイモネジを無茶苦茶ねじ込まないと架台の底に届きません。ギリギリ回り止めの用を果たしているようですが、もっと長いイモネジに交換した方がよいかも。
テーパーキャッチャーの方は固定用の手回しネジに六角穴も付いていて、六角レンチで締め増しできるのが便利です。今回のように重量のある機材を搭載する場合は締め増し必須だと思います。
なお、極軸調整の際に最初の設置の向きが悪くて架台の調整ネジで調整しきれない場合にテーパーキャッチャーのネジを緩めて機材の向きを調整するのは、危険なのでやめた方が良いです。この日うっかりやってしまいましたが、撤収時にバラす時にテーパーアダプターの南側が少し浮いていて冷や汗をかきました。六角レンチで十分締めたと思ったんですけどね…
さて、実際に FSQ-85EDP を載せてみた感想ですが、使えないわけじゃないが、なかなか厳しい、というのが正直なところ。ピント合わせでは鏡筒がかなり揺れてスムースにはピントを追い込めませんでした。また別の日にテストした時は風が強めで、直焦点のガイド撮影で星像が8の字を描いていたのでテストを中止しました。
追尾そのものやアライメントや自動導入については問題ないです。この日は乾電池駆動で使いましたが、自動導入時の高速駆動でも脱調することなく動いていました。ベランダの奥行きの関係でホームポジションから最初のアライメントまではカメラを外して少々アンバランスな状態で駆動していましたが、問題なく駆動できました。赤経・赤緯共に少々のアンバランスなら問題ないようです。
電池の持ちですが、この日は新品の電池を入れて20:00から翌4:00頃まで、鏡筒の載せ替えの間電源を切った以外ほぼ一晩休みなくテスト撮影を続け、高速駆動もアライメントと天体の自動導入で7回以上行いましたが、電池切れは発生しませんでした。撤収後に電池の残量をテスター*5 で確認したところ REPLACE と GOOD の中間でした。電圧は約1.3Vでした。
コントローラーは WiFi 直結でスマホ(iPhone SE2)の SynScan Pro アプリを使いました。WiFi の切断等のトラブルはありませんでした。*6 アプリは日本語化が中途半端なのが困り物で、アライメント用に使う恒星の名前が英語のままのものと日本語(カタカナ)化したものが混ざった状態になっており、検索の際にどっちで入力していいかわかりません。
1等星(1.5等)以上の明るい星は全部日本語化されているようですが、2等以下でも一部日本語化されているものがあり、そういう星を英語で検索してもヒットしないという罠があります。せめて英語名で検索しても日本語化された星がヒットすればいいのですが…
最後におまけでカラーの月面写真を。この日はついでにR,G,Bでも撮っていました。色収差の問題なのかシーイングの問題なのか、写りは R は Hα と同等、G は少し落ちる、B はもっと落ちるという感じでしたが、色情報は多少写りが悪くてもなんとかなるので WinJUPOS の De-rotation of R/G/B frames でRGB合成したものに、Hαを L のかわりにして LRGB 合成しました。
![月 (カラー合成) (2023/5/2 21:39) [Star Adventurer GTi + FSQ-85EDP テスト]](https://live.staticflickr.com/65535/52871215902_b4b9c4792f_c.jpg)
高橋 FSQ-85EDP, AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F8.74), ZWO Ha Filter 31mm, ZWO LRGB Filter 31mm / Sky-Watcher Star Adventurer GTi / ZWO ASI294MM Pro (46 Megapixel, Gain 220, 0℃), SharpCap 4.0.9268.0 / 露出 Ha: 1/60s x 300/1000コマ、R: 2.932ms 250/500コマ, G/B: 1/250s x 250/500コマをスタック処理、Ha を輝度情報としてLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, WinJUPOS 12.2.5, Photoshop 2023, Lightroom Classic で画像処理
Image Measurement の精度に限界があり、WinJUPOS の de-rotation でも色ズレが残りますが、それは RegiStax の RGB Alignment で調整しました。それでも僅かなズレは残りますが、wavelet を弱めにかければほとんど目立たないです。倍率色収差のせいか月の縁が黄色っぽくなるのは完全には抑制できませんでした。
de-rotation では R/G/B のみを使って L(Hα) は合成しませんでした。ここで L まで合成してしまうと RGB Alignment で色ズレ調整すると像がボケるのではないかと思ったのと(実際そうなるかは未確認)、L と RGB で wavelet 処理の強度を変える必要があるからです。
L(Hα) と RGB は Photoshop で合成しましたが、実は De-rotation R/G/B frames では reference time を調整できず、reference time を Hα の撮影時刻に揃えることができませんでした。たぶん L を指定するとそれが reference time になるのですが、上述の理由により指定できず。
そのため Photoshop で Hα を RGB に重ねると微妙にズレが出てしまっていたのですが、月面の色情報は主に海の部分の色調がメインなので細かいズレは見た目に影響は出ないとわかったのでそのまま合成してしまいました。色々インチキくさいですが、見た目はちゃんとカラー写真になっています。
ということで、月・惑星・太陽あたりの撮影なら FSQ-85EDP を載せてもなんとかなるようです。でも風にはめっぽう弱いのは覚悟しないといけません。当日強風のせいで日食撮影失敗、なんてなると目も当てられませんので…
Star Adventurer GTi についてはスターベース東京さんのブログでも紹介されています。
こちらはビクセンAPP-TL130三脚と専用雲台アダプターのセット品をお勧めしています。アダプターの径が架台と合っていて、上述のテーパーアダプターのような問題がなくて安心です。APP-TL130 も軽くて丈夫な三脚として評判で、プロ天体写真家の KAGAYA さんもフルアームド SWAT を載せて愛用しておりバトルプルーフ済みの逸品。
オートガイド撮影の作例は FS-60CB のみですが、FC-76DCU および FC-100DZ を載せた時の使い勝手にも言及があります。FC-100DZ はさすがにギリギリみたいですが FC-76DCU は眼視では快適に使えたとのこと。
というわけで、次回はいよいよオートガイド撮影のテスト結果を報告したいと思います。鏡筒は RedCat 51 (51mm F4.9)、BLANCA-80EDT (80mm F6)、FSQ-85EDP (85mm F5.3) の三本です。んがっぐっぐっ。*7



