慶應義塾大学SFCで行われた講義を書籍化した一冊です。第一線で活躍するクリエイターの思考法を、そのまま教室で聞いているような感覚で読める、たいへん贅沢な内容でした。
正直に言えば、こうした講義を直接受けられる学生さんがうらやましくなります。私のようにSFCとはまったく縁のない人間にとっては、こんな授業を受けたいと思っても土台無理な話です。だからこそ、こうして本という形で一般の読者にも開かれていることが、本当にありがたく感じられました。「良い教育を受けたければ、良い学校に行かなければならない」という現実も、内容とは別のところでしみじみ実感してしまいます。
講義では、ブランディングを「センス」や「ひらめき」ではなく、「設計」として捉えているのが印象的です。成功している企業やアーティストの事例が紹介され、「なるほど、だから選ばれるのか」と腑に落ちる瞬間が何度もありました。偶然ヒットしているのではなく、すべてが丁寧にデザインされているのです。
デザイン職の人はもちろん、ものを作ったり売ったりするすべての人に刺さる内容だと思います。「どう売るか」に悩む前に、「どうすれば自然と売れていくか」を考える視点をくれる、学びの多い一冊でした。
理想的なブランディングの型を知った上で、自社の身の丈に合った「継続可能な一歩」を踏み出すということです。
本書は「ここに書かれたことをすべて実行できれば間違いなし」と言い切れるほど、非常に骨太で隙のない内容になっています。ブランド構築の正解が網羅されており、教科書としてこれ以上ない一冊です。
一方で、これらすべてを完璧にこなすのは、リソースの限られた個人経営や小規模な企業にとっては、現実的にハードルが高いと感じる部分もあります。外部の専門家に丸投げすれば多額の費用がかかり、回収の目処が立たなくなるリスクもありますし、かといって事業主が一人で背負い込めば、息切れして途中で諦めてしまう懸念も拭えません。
完璧主義に陥り、志半ばで挫折してしまうのは一番もったいないことです。日本のビジネスシーンにおいては、本書のポイントを絞って取り入れるだけでも、十分に及第点以上の成果が出せるはず。まずは自社にできる範囲で「要所」を確実に押さえ、無理なく育てていく姿勢が大切だと再確認しました。
表面的な「見栄え」を整えることではなく、企業の根幹から一貫した価値を築き上げるプロセスです。
全体を通して読み物としてもじっくり楽しめる一冊でした。基本的には外部のデザイナーを招いて本格的にブランディングを行いたい企業向けの内容です。それなりの規模が必要な取り組みも多いですが、その考え方自体は、小規模な会社のスタッフにとっても非常に参考になります。
ブランディングというと「怪しい雰囲気を消したい」「それっぽく見せたい」といったことの意味で使われることも多いです。これは簡易版という位置づけではアリ。
でもこの本は、もっと深い部分から誠実に構築していく手法を説いています。建築出身の著者らしい、構造的でしっかりとした設計思想が感じられました。
実際の私の仕事に落とし込むなら、本書の通りだとかなり重厚な作り込みが必要になるため、もう少しカジュアルで簡素化した組み立てを模索してみたいと思います。
今週のお題「準備していること」