馬が仕事をイヤイヤしている
こう聞いて思い浮かぶのは
・競馬でゲート入りをイヤイヤ
・パドックでトボトボと歩く
・果ては放馬して逃げていく
あとは調教の時に動かないとか、そういう所が多いんじゃないかと思う
乗馬クラブでも馬がイヤイヤしているのを見ることができる
というか馬房から出す時点で仕事を察してイヤイヤしている
いつもおやつをあげるときは飼い葉桶側に立つのだが、馬を出すときは出入り口側に立つのでこの時点で馬が「仕事をさせられる」ことに気付く
すると、やたらと目をそらされるようになる
おやつをねだるあのキラキラとした目ではなく「どっか行ってくれないかな」みたいな顔をされる

中には、壁を向いてこっちに尻をむけて「よく見えないからちょっとよくわからないですね」みたいなことをする馬もいる
どうにか無口を着けて馬を馬房から出そうとすると、出ない
引っ張っても出たがらない
ここから出ると仕事をさせられるのがわかっているので抵抗してくるのだ
力ずくで引くのは無駄すぎる
なにせ相手の体重はおよそ500kgだ
500kgを引くだけの腕力はないし、相手はそれだけの巨体の生き物だ。嫌がって暴れでもしたらこちらもタダではすまない
なんとかなだめすかして洗い場に連れて行き、乗るための準備である馬装をする
鞍をつけたり怪我をしないようにプロテクターをつけたり手綱を着けるのだが、コレにも静かに抵抗されたりする
プロテクターをつけようとすると足がなんとなく逃げていったり、手綱(頭絡)をつけようとすると手が届かないところまで首を静かに動かしたまま微動だにしなくなったりする
なんとか馬装を終えて馬に乗るぞと馬場まで馬を引こうとすると、馬の足取りがメチャクチャ重い
一歩一歩がものすごく遅い
どうせ仕事をさせられるのに、なぜこんなにイヤイヤするのだろうかと何度も疑問に思って気付いた
「これ、出社を嫌がる人間と同じなのでは…?」
スーツや作業着を着たり、朝の通勤で職場まで歩いたり
イヤだと思っていても、食べていくために人間は仕事をする
馬も同じだ
自分の食い扶持を稼ぐために人間を乗っけてお金を稼いでいる
馬がイヤイヤしようが、食べていくためには乗馬の馬として必要なことだ
コレに気づいてからは
「イヤイヤしようがちゃんと働かないとメシが食えないんだぞキミたちは。社会馬としてがんばって仕事をするんだ」
とイヤイヤされる度に馬に謎の説教をしている
「こっちだって働いて稼いでここに来てるんだからキミたちも仕事をしてくれ」
とまで言っている
ただ、馬の偉いところは馬場に入れば仕事モードに入ることだ
入るまでは腰が引けてる馬も、馬場に入れば首をあげてシャンと歩き出す
見習わないといかんなぁと、自分の仕事中の態度を反省するなどしている
そして、スタッフが馬房から出したり馬装をするときは素直に指示を聞いている
誰にゴマをすればいいのかちゃんと理解しているのは…馬だから許されてるのであって真似しない方がよさそうだ。さすがに社会人として…