RHELのスペシャリストソリューションアーキテクトの田中司恩(@tnk4on)です。
先日、Red Hat Enterprise Linux (RHEL) の最新マイナーリリースである RHEL 10.1 および RHEL 9.7 の一般提供(GA)が発表されました!
Red Hatのテクニカルマーケティングマネージャー、Nate Lager氏が自ら新機能や改善点を解説するライブストリーム(Red Hat Enterprise Linux 10.1 and 9.7 release live stream!)が公開されています。
この記事では、約38分間の動画の内容をトピックごとにタイムスタンプ付きで詳細にまとめました。忙しくて動画を見る時間がない方も、この記事で最新情報をキャッチアップしてください!
🚀 イントロダクションと注目の新機能 (00:00 - 03:41)
まず、Nate Lager氏からRHEL 10.1と9.7のリリースが発表され、今回のリリースの「目玉機能(Marquee Features)」が紹介されました。
- AI アクセラレーター: NVIDIA, AMD, Intel の最新AIハードウェア(GPUなど)に対応した検証済みドライバーへのアクセスが、RHELのリポジトリを通じて格段に容易になりました。
- オフライン RHEL コマンドラインアシスタント (開発者プレビュー): これまでクラウド接続が必須だったAI搭載のコマンドラインアシスタント(CLA)が、オンプレミス環境でも実行可能になります。
- ソフトリブート: OS全体を再起動せず、ユーザー空間(サービスやアプリケーション)のみを数秒で再起動できる機能が導入され、アップデート適用時のダウンタイムを大幅に短縮します。
- 耐量子暗号 (PQC) の進展: 将来の量子コンピュータによる脅威に対応するため、RHEL 9および10で耐量子暗号(PQC)への対応がさらに進みました。

💡 イノベーション(Innovation) (03:42 - 10:19)
AI機能の強化と、管理者の運用を助けるアシスタント機能のアップデートです。
- (03:46) AI アクセラレーターの詳細(RHEL 10.1): RHEL 10.1では、各ベンダー(NVIDIA, AMD, Intel)のドライバーが公式リポジトリから提供されます。これにより、コンプライアンスを維持しつつ、AI/MLワークロードに必要なハードウェアを信頼性の高い方法でセットアップできます。

AI Accelerators for Red Hat Enterprise Linux - (05:35) コマンドラインアシスタント (CLA) の改善(RHEL 10.1/9.7):
- リクエストサイズの増加: アシスタントに分析させるログやコマンド出力の最大サイズが、従来の2KBから32KBへと大幅に増加しました。
- オフライン CLA (開発者プレビュー): Satellite サブスクリプションを利用することで、セキュアな(閉域網の)環境でもAIアシスタントを利用できるようになります。

Red Hat Enterprise Linux Command-Line Assistant
開発者エクスペリエンスも大きく向上しています。
- (07:58) 最新ツールチェーンのサポート(RHEL 10.1/9.7):
- Go 1.24
- LLVM 20
- Rust 1.88
- GCC 15
- .NET 10
- WSL (Windows Subsystem for Linux): RHEL Image Builderを使用してWSL2イメージをを作成できるようになりました。

New developer features and enhancements
- (08:50) RHEL for Business Developers: 組織内の開発およびテスト用途のみ、1ユーザーあたり最大25のRHELサブスクリプションがセルフサービスで無償利用可能になりました。

Red Hat Enterprise Linux for Business Developers
RHEL for Business Developersの詳細については以前の記事を参照ください rheb.hatenablog.com
🛠️ 運用性のシンプル化 (Simplify) (10:20 - 17:30)
システム管理をより簡単かつ効率的にする機能が追加されました。
- (10:22) ソフトリブート (Soft-Reboots)(RHEL 10.1):
- カーネルを再起動しないため、ファームウェアの初期化などをスキップできます。
- イメージモード(
bootc update)でのOSアップデート適用や、パッケージモード(systemctl soft-reboot)での迅速なサービス再起動に絶大な効果を発揮します。
Soft-Reboots for Red Hat Enterprise Linux
- (12:24) コンテナツールの再現可能なビルド(RHEL 10.1/9.7):
PodmanやBuildahでコンテナイメージをビルドする際、タイムスタンプなどの変動要素が排除され、同じ内容なら必ず同じハッシュ値のイメージが生成されるようになりました。CI/CDパイプラインやコンプライアンス監査に非常に有効です。
Reproducible Builds for RHEL Container Tools - (13:44) 新しい Image Builder CLI (Tech Preview)(RHEL 10.1): 従来必要だったバックグラウンドサービスなしで、RHELイメージをビルドできる新しいCLIツールです。CI/CDへの統合がより容易になります。

New Image Builder Command Line Interface - (15:00) RHEL システムロールのアップデート(RHEL 10.1/9.7):
- HA (High Availability): クラスター設定の迅速な再作成が可能に。
- Time: NTPクライアント(chronydなど)やIPv4/v6の指定に対応。
- Metrics: Apache Spark メトリクスのサポートを追加。
- Podman: Podman設定ファイル(TOML形式)の管理に対応(RHEL 10.1のみ)。

Red Hat Enterprise Linux System Roles
🛡️ セキュリティの強化 (Protect) (17:31 - 22:54)
セキュリティはRHELの中核です。今回も大幅に強化されています。
- (17:32) 耐量子暗号 (PQC) for RHEL 9.7: RHEL 9.7がPQCに対応し、OpenSSLを通じて標準アルゴリズム(ML-KEM, ML-DSA)をサポートします。

Post Quantum Crypto for RHEL 9.7 - (18:48) 強化された PQC TLS サポート (RHEL 10.1): RHEL 10.1では、将来の「盗聴しておき、後で解読する(Collect Now, Decrypt Later)」攻撃に備え、PQC-TLSをデフォルトでサポートします。

Enhanced PQC TLS Support - (19:57) ACME サポート: RHEL IdM (Identity Management) がACMEサーバーとして機能し、環境内のWebサーバーなどのTLS証明書を自動発行・更新できるようになります。

Automatic Certificate Management Environment - (21:15) OpenTelemetry と TPM サポート: クラウド環境で仮想TPM (vTPM) をサポート。暗号鍵をvTPM内のセキュアな領域に保存し、より強固な認証や署名操作が可能になります。

OpenTelemetry Trusted Platform Module support
🤝 信頼と管理 (Trust) (22:55 - 24:50)
エコシステムとアップグレードパスの整備も進んでいます。
- (22:58) Red Hat Satellite 6.18 ハイライト: Red Hat Lightspeed(脆弱性・アドバイザーサービス)との連携、オフラインCLAのサポート、FlatpakのWebUIサポートなど、管理機能が強化されました。

Red Hat Satellite 6.18 highlights - (24:32) LEAPP アップグレード: RHEL 9.7 から RHEL 10.1 へのインプレースアップグレードが正式にサポートされました。

LEAPP upgrades from RHEL 9.7 to 10.1
🔄 ライフサイクル (Lifecycle) (24:51 - 28:31)
最後に、RHEL 7, 8, 9, 10 のサポートライフサイクルと、各マイナーリリースのサポート期間についてのおさらいがありました。
(24:56) RHEL 7 の状況: RHEL 7 は現在、「Extended Life Cycle Support(ELS)」フェーズにあります。これは標準の10年間のライフサイクルが終了した後の有償アドオンサポートです。もしELSアドオンを契約していない場合、セキュリティアップデートやバグフィックスは提供されていません。動画でも、まだRHEL 7を利用している場合は新しいRHELへの移行を強く推奨しています。

Red Hat Enterprise Linux 7 (25:36) RHEL 8, 9, 10 の標準ライフサイクル: RHEL 8以降のメジャーリリースは、一貫して10年間のサポートライフサイクルが提供されます。この10年間は、以下のように分かれています。
- フルサポート (5年間): 新機能の追加、ハードウェアサポートの追加、バグフィックス、セキュリティ修正が提供されます。
- メンテナンスサポート (5年間): 主に重大なセキュリティ修正とバグフィックスが中心となり、新機能の追加は行われません。

Red Hat Enterprise Linux 8, 9, and 10
(注意)10年間のサポートが提供されるのは各メジャーリリースに対してのみです。マイナーリリースごとについてのサポート期間は次のトピックを参照ください。
- (26:33) マイナーリリースのタイムラインと EUS:
動画では、RHEL 10, 9, 8 の各マイナーリリース(例: 9.0, 9.1, 9.2...)ごとのサポート期間を示すタイムライン(ガントチャート)が提示されました。
特に重要なのが「Extended Update Support(EUS)」です。
- 通常、セキュリティ修正は最新のマイナーリリース(例: 9.7)に対してのみ提供されますが、特定のアプリケーションの互換性維持や検証サイクルのために、特定のマイナーリリースバージョン(例: 9.6)に固定(バージョンロック)したいというニーズがあります。
- EUSは、そのような企業向けのアドオンで、特定の偶数番号のマイナーリリース(例: 9.4, 9.6, 10.0, 10.2)に対して、標準より長く(約2年間)セキュリティ修正やバグフィックスを受け取れるようにするものです。
- 動画のタイムラインでは、RHEL 10.1 は EUS の対象外であり、次の EUS は RHEL 10.2 となる予定であることが示されています。

Red Hat Enterprise Linux 10 
Red Hat Enterprise Linux 9 
Red Hat Enterprise Linux 8
(注意)EUSは定められた期間内においてのみ、通常よりも長くサポートが提供されるものです。定められた期間を超えて、同じマイナーリリースバージョンを使い続けることを推奨するものではありません。
📚 まとめと追加リソース (28:32 - 38:32)
今回のリリースでは、AIハードウェアへの対応強化、AIアシスタントのオンプレミス対応、ソフトリブートによる運用効率化、そしてPQC対応による将来のセキュリティ脅威への備えなど、多岐にわたるアップデートが行われました。
動画内では、Red HatのYouTubeチャンネルや、無料で試せるハンズオンラボ(lab.redhat.com)なども紹介されています。 ぜひ動画本編もチェックして、新しいRHELのパワーを体感してみてください!
参考リンク
動画内で紹介された各機能の詳細は、ブログ記事やリリースノートを参照ください。
- Red Hat Delivers Evolving Foundation for Modern IT with Latest Version of Red Hat Enterprise Linux
- Red Hat Delivers Enhanced Experience for AI Accelerators on Red Hat Enterprise Linux
- What's new in Red Hat Enterprise Linux 10.1
- Introducing Red Hat Enterprise Linux 9.7
- Install AI accelarator drivers with a single command on Red Hat Enterprise Linux
- 10.1 リリースノート | Red Hat Enterprise Linux | 10 | Red Hat Documentation
- 9.7 リリースノート | Red Hat Enterprise Linux | 9 | Red Hat Documentation