HT-Z9Fからの買い替えです。主な用途はテレビと接続しての映画やドラマの鑑賞、時々音楽再生です。
総じて、HT-Z9Fと比較したレビューとなります。
【買い替えの動機】
近年、BDのみならず各種配信サービスでも5.1chサラウンドや、ドルビーアトモスなどのオブジェクトベースオーディオ形式での配信作品の増加により、3.1ch出力のHT-Z9Fでは不満を感じる点が増えてきたために買い替えました。
注:HT-Z9F専用スピーカーであったSA-Z9Rも所持していましたが、集合住宅在住の私が使用してる音量の範囲ではSA-Z9Rからの音はイマイチで臨場感に欠けるように感じていたため、殆ど使用していませんでした。
【デザイン】
フロントグリル部分がファブリック素材になったため、金属素材を用いていたHT-Z9Fに比較してインテリアとしてのオーディオ製品っぽさは良くも悪くも下がったように思います。うっかり硬いものをぶつけてファブリックを破ってしまわないか心配ではあります。
【音質】
入れ替え直後に初めて聴いた際には臨場感を演出する傾向が強い印象を受けましたが、数日使用しているうちに耳が慣れて気にならなくなりました。数十時間単位での音響機器のエージングを私は一切信じていませんが、購入後に違和感があっても、まずは数日使ってみることをお勧めします。
音圧は本機単独でもHT-Z9F比で明確に向上しているように思います。集合住宅なので、全力で鳴らせないのが悔やまれます。
音の解像感について、本機単独ではHT-Z9F比で中低音域はやや濁って聴こえます。サブウーファーが別途付属する機種と比べると、ここはどうしても難しい点かもしれません。設置場所や予算が許すのであればサブウーファーを追加した方が幸せになれると思います。
数日遅れてSA-SW5を追加導入した結果、中低音域の濁った感じは消えました。中低音域の解像感の向上に限れば、SA-SW3でも十分だったかもしれません。
360 Spatial Sound Mappingによるサラウンド感は圧巻です。
音響は究極的には物理現象であると考えているため、この手の仮想サラウンド技術をあまり信用していませんでしたが、本機のこれならば常時有効でも良いかなと思っています。
HT-Z9FのVertical Surround Engineは、有効時にイマイチ音が濁って反響しているような印象を受け、定位が狂ったように聴こえる再生になることもあったため殆ど使っていませんでしたが、本機の場合、そのような違和感が殆どありません。当初はリアスピーカー(SA-RS5/SA-RS3)の購入も検討していましたが、リアルサラウンドに拘らないなら要らないかも...... 迷いどころです。
「これだけ360 Spatial Sound Mappingが良いなら、ビームツイーター搭載の上位機種(HT-A9000)を購入しても良かったのでは」。そう思わせてくれる程度にいい意味で期待を裏切ってくれました。
なお、BRAVIAとの連携によるアコースティックオーディオは試せる環境にないため使っていません。
【機能性】
AndroidまたはiPhoneのアプリでの設定に変わったため、セットアップが簡単になりました。
また、アプリ側でサウンドバーが再生している音源に関する情報を把握できるため、AppleTVなど再生機器側の出力とサウンドバー側での入力の確認が格段にやりやすくなりました。これは明確に改善された点だと思います。
一方、HT-Z9Fでは本体前面に配置されていたインジケータパネルが消え、バー片隅のランプだけになったため、音量の数値を確認する際にいちいち設定アプリを開く必要があるのはイマイチです。ナイトモードの有効無効の確認などがしにくいのはちょっと不便です。
HT-Z9Fの時に搭載されていた「スポーツ」「ミュージック」などの各種サウンド設定モードが消えましたが、使い分けが面倒くさくて元々使っていなかった(常に「スタンダード」に設定していた)ので、あまり困っていません。個人的にはシンプルでいいと思います。
夜間使用時に低音域の音量を下げるナイトモードが継続して搭載されているのはありがたいです。夜間の映画鑑賞でいつも役立っています。
【入出力端子】
HT-Z9FにHDMI入力が2→1に減ったとのことですが、元々eARC端子以外使っていなかったので困っていません。
ただ、テレビ側のHDMI入力端子のうち、ドルビーアトモスなどのフォーマットに対応した端子の数は決して多いわけではないため、BDプレーヤーやゲーム機、AppleTV、Amazon FireTVなど複数の機器を繋ぐ必要がある方にとっては困る点かもしれません。
【サイズ】
横幅110cmはちょっと大きいですが、高さと奥行きがそれほどではないため、横幅さえ確保できればなんとか設置できます。
難を挙げるならば、テレビが65型以上でないと脚の間に見た目よく設置できなかったり、横幅120cm~140cmかつ奥行きが40cmを超えるテレビ台の商品ラインナップが決して多くはないため、テレビサイズを48~55型にしつつ本機を見栄え良く設置するのが難しいです。
テレビ本体の脚の上を跨ぐように配置するためのパーツも付属していますが、そもそも55型のテレビであれば横幅が120cmあるのだから、その中に収められるようにテレビ側のラインナップも組んでほしいです。同一メーカーのテレビ(SonyのBRAVIA)であっても、モデル年度によってテレビの脚の間隔が変わるため、サウンドバーだけ買い換えても設置が難しいことが多いです。もう少しなんとかしてほしいです。
【総評】
HT-Z9Fからの買い替えですが、満足しています。
各メーカーがサウンドバーに搭載している仮想空間オーディオ技術にあまり期待していなかった人は、いい意味で裏切られるのではないでしょうか。
予算が許すならば検討の価値がある製品であると思います。
難点として、SonyはBRAVIAブランドのシアターパッケージとしての展開を目論んでいるように見えますが、テレビ側の諸々がサウンドバーである本製品とうまく噛み合っていないように見えます。無理にテレビ側と同一メーカーで揃えない方が良い製品かもしれません。