『最高秒８コマ、小さな玉ボケがうるさい、以外は不満なし』 TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036) リタイヤーさんのレビュー・評価

Tamron 28mm	FE 28mm F2	Tamron 50mm
FE 50mm F1.4 ZA

６歳と０歳の孫撮り専門ですので、その範囲でのレビューとなります。まず不満点から。

【不満点１】
α９との組み合わせではAF-Cでの連写が秒８コマ程度しか撮れません。タムロンに問い合わせたところ同じ現象が確認されましたので、全品に同様の現象が発生すると思われます。タムロンによれば被写体が動いていてもいなくても秒８コマ程度というのは同じだそうです。タムロンはこの現象を把握していなかった模様で、特に連写速度に制約はかけていないので原因を調査して再度連絡をいただけることになっています。ファームアップでBatisなみの秒１５コマ程度になってくれれば良いのですが、このまま秒８コマが最終仕様となってしまうとα９ユーザーにはかなり残念なことになります。タムロンからの連絡があれば再レビューでご報告したいと思います。

【不満点２】
玉ボケの中はまあまあきれいなのですが縁取りが少し目立ちます。大き目の玉ボケではさほど気になりませんが、小さな玉ボケが密集するような状況、例えば背景にある樹木の葉に日の光が照り返しているような状況ではボケがかなりうるさくなります。アップした画像は28mmと50mmの画角でFE 28mm F2とFE 50mm F1.4 ZAの単焦点レンズとボケを比べたものです。絞りはすべてF2.8です。中央奥のいくつかの白い大き目の玉ボケは気になりませんが、左側の樹木のボケはタムロンがはっきりうるさいです。等倍で見ていただくと縁取りのある小さな玉ボケが密集しており、これがうるささの主因であることがわかると思います。

【操作性】
ズームリングは望遠側が少しだけ重くなりますが、全体として適度なスムーズさだと思います。自重落下はありません。α９への装着もスムーズです。ピントリングについてはＭＦをほとんど使わないので無評価です。ピントリングを操作することがほとんどない私にとってズームリングが先端側についているのもグッドです。

【表現力】
解像力については片ボケの有無のチェックもかねて1〜3mくらいの近距離から細かな地図を撮影して確認してみました。その結果は、中央は開放から十分シャープで、単焦点と比較してもそんなに遜色ないレベルですが、望遠端だけは少しゆるくなります。解像力の低下するAPS-C機で使うと実写でも望遠端でのゆるみに気がつくかもしれませんがフルサイズ機では問題ないレベルだと思います。

隅の解像力はさすがに落ちます。FEマウントの単焦点レンズはF5.6まで絞ればどれも問題ないレベルまで改善しますが、このレンズは広角端以外はF8まで絞っても少しゆるさが残ります。

ボケは先に述べた玉ボケ以外はやわらかくきれいだと思います。年輪ボケは昼間の撮影では経験していませんが、非球面レンズが使われているので夜の撮影などでは出ると思われます。口径食は開放でも隅と左右の辺に限定されており、中央部はかなり広い範囲で円形が保たれますので開放で使ってもあまり気にならないでしょう。

逆光耐性はまだよくわかりませんが、２回、日中の公園で撮影した感触では広角開放でそこそこフレアが出るのでそんなに強いわけではなさそうです。フリンジは開放逆光でも目立ったものはありませんでした。優秀だと思います。

色味はFE 55mm F1.8 ZAに似たこってり系です。アップした画像の道路の色などを比較するとタムロンの方は暖色寄りです。

【携帯性】
F2.8の標準ズームでこの軽さとサイズは唯一無二です。私は何本かの単焦点の中からその日の１本を選んで、それだけで１回の撮影を済ますというやり方をしています。何度も行く近場の公園などは画質最優先のこの方法でいいのですが、孫を連れてめったに行かないところに遠出するときや泊りがけの旅行などは単焦点１本ではいかにも心もとなく、これまでは軽いFE 28mm F2とFE 55mm F1.8 ZAの２本を持ち出すことが多かったのですが撮影しながらのレンズ交換もなかなか面倒でした。そんなわけで旅行用に明るく軽い標準ズームをずっと待っていましたが、やっと手にできたという思いです。

【機能性】
デザインはシンプルな美しさがあります。プラスチック製の鏡胴もモダンなデザインに一役買っており、金属製でなくとも私はまったく気になりません。ボタンやスイッチ類のまったくない潔いレンズです。瞳AF用にフォーカスホールドボタンはほしいところですが、そうするとズームリングを細くしなければなりませんので、付けないとうい選択もありだと思います。SONY FE 24-105mm F4Gはほぼ同じレンズ長でフォーカスホールドボタンがついていますがそのぶんズームリングの幅が狭く、ちょっと使いにくそうです。

手ブレ補正を付けずに、その分小さく軽く安価というのも潔く、ありがたいです。望遠側が105mmまであるような場合はボディ内手ブレ補正のある機種で使用する場合でもレンズ側に手ブレ補正の欲しいところですから、75mm止まりのこのレンズならではの選択とも言えます。

AFは静かです。速さも精度も他のSONY純正レンズと比べて違和感はありません。ズーム域は標準的な24-70mmと比べると、ポートレートではほぼ使わない広角側24-27mmを切り捨て、わずか5mmといえポートレートでは重要な望遠側をのばした、なかなかつぼを押さえた設計だと思います。

【総評】
普段緑の多い公園で孫を撮っている私にとって樹木のボケがうるさいというのはけっこう致命的で、当初の予定通り遠出や旅行限定の持ち出しになると思います。とはいっても目立った不満点はこれだけで、しかも単焦点、特に50mm F1.4 ZAクラスと比べての不満ですから、比べるのが酷というものでしょう。ネットの作例を見る限りSONY 24-70mm GMでも小さな玉ボケが密集する時はうるさくなる傾向にあるようです。

このレンズの魅力は画質は落とさずに、それ以外のあれやこれやをばっさり切り落として軽量・安価に徹した潔さだと思います。私のようなファミリーポートレート専門のアマチュアにはど真ん中のストライクレンズです。