扱いやすくて値段も手ごろ、弄っても弄らなくても撮れる
20年ほど、ビデオ撮影の仕事をしていました。今は施設園芸をしています。
スチールのカメラを持つのはデジタルでは初です。
作物の生長点や花をスマホやタブレットに記録して、日々の変化や差分を可視化しようと考え、購入を検討しました。
求めていたのはレンズ交換式であること、準マクロ程度のMODであること、眼鏡で覗いてもファインダーがケラれないこと、そして最も考慮したのが深度が深いことです。
あくまで資料なので深度を浅くしてもまったく意味がありません。写っているものがボケてること、少なくとも判別できないほどまでボケボケにボケてる必要はありません。
ビデオ畑出身だからなのか、ボケ味やボケの旨味といったものには元々何の魅力も感じませんが、今回は目的自体がボケを必要としていません。
撮影は日中だけでなく早朝もあります。シャッターを長く開けせざるを得ない時に、強力な手ブレ防止も必要となります。三脚据えるようなスペースも時間もありません。
【デザイン】
余程奇抜であったり機能が制限されるようなものでなければどうでもいいです。
【画質】
こちらが求めていることに対して完全にオーバースペックです。
【操作性】
LEICA12-60mmのピントリングがズームリングより小さくて狭いのが気になります。ズームリングがビデオ基準とは逆向きなのも気になります。ファームウェアが上がってピントリングがリニアになったのはGoodです。
【バッテリー】
使い方次第ではあります。長くても数時間程度なら問題ありませんが、それ以上は予備が無いと少々不安かもしれません。ちょっと遊んでいるだけでみるみる減っていきます。もし動画メインだと更に気になるところでしょう。
しかしユーザー側から「ボディがでかい、重い、機能が足りない」と言われていればバッテリーの大容量化もできず本体の省電力化もできず、そりゃそうなるよなとは思います。
【携帯性】
最安値+\5000でバッテリーグリップ付きが買えたので、着けっぱなしにしています。手が大きいからなのかグリップ装着した方が左手の収まりが良く、掌にしっかり乗せながら指先が自然な形でピントリングに触れるので気に入ってます。
重いとは思いますが、別に文句もありません。脚とアクセサリー込みで20kg超えるカメラ使ってましたから。
携帯性を気にするならGFシリーズやOM-D E-Mシリーズの方が良いと思います。
【機能性】
モノクロevfにゼブラとピーキング、しかも有料アップグレードでWFM。
プロ仕様のビデオカメラのような感覚で撮影できます。
カラーバーが出る訳ではないのでevfそのもののブライトやコントラストは調整できませんが仕方ないところでしょう。ゼブラはIRE5%刻みの50%〜105%まで指定可能、これは良いです。DC-S1だと二重ゼブラもできるようですがG9ではシングルですね。ピーキングは強と弱の二択で、実用的には強のみとなると思います。色選択や強弱選択ではなく細い太いをリニアに調整できるとなお良いのですが、これは贅沢な望みでしょう。
動画撮影のためのUIを考えると、例えばレンズのリング周りがスチール向けの、特にAF重視の設計なので、プロ用のビデオレンズやシネレンズと比べると丁寧に撮る系の動画撮影には扱いにくいです。予期せぬタイミングで勝手に客の視点を動かされるようなオートフォーカスでは撮影になりませんから。
本体もアイリス、ピント、手ぶれ防止と、基本要素のほとんどがオート前提ですし各所のUIが動画撮影向きではないです。もどかしく思える時もありますが、仕事ではないので問題ありません。
ジンバルで無意味に動かす撮影をよく見かけるのも理由が分かりました。
手ぶれ防止はとんでもなく効きますね。ただこれもCCDではないので、画角や動きによっては機能の一部を切る必要があるでしょう。
【液晶】
evfがケラれなかったことだけがOM-D E-M1 IIIではなくG9を選んだ理由です。もちろんE-M1 IIIも良いカメラなのだろうと思います。
【ホールド感】
時に右手の親指の支えとなる部分、後ダイヤルのすぐ下の薄い出っ張りが地味に良いです。
【総評】
「このレンズキットだけで、求める目的のほぼすべてを賄える」だろうと踏んで購入しました。もちろんバッグや小物は買いましたが、少なくとも業務の経費としてはこれ以上出さなくても済む、それだけの価値がある製品だと思います。10-25mm F1.7が欲しくなりますが、業務では不必要、オモチャとしては高すぎるので買わないことでしょう。
蛇足ですが、「ソニーやパナは所詮家電メーカー」云々というのを目にすることがたまにあります。映画を含めた動画撮影において、ソニーやパナソニックがどれだけのことを成し遂げてきたかを知っていればそんな台詞が出てくるわけがないのにな、とは思います。