『重すぎる神レンズ』 SONY Planar T* FE 50mm F1.4 ZA SEL50F14Z HIEN_さんのレビュー・評価

これは現像してます	待ち合わせ撮、思いっきり画質下げてこれ	街並み撮、これも画質下げてますけど現像はなし
白黒です

重すぎる神レンズ

35F18Fや24105Gのような優れた、けれど特徴のないレンズと戯れていると、遅かれ少なかれ人はZeissやGMに目移りしてきます。まして、50mm f1.4という数値を持ったレンズに興味を持たないのはむしろ不自然とすら言えます。人は85GMを使わずとも85f18で我慢できるでしょうし、Distagonがいかに素晴らしいからといって誰しもが35F18Fや各種パンケーキレンズで我慢できないとは限りません。しかし、Planar 50mm f1.4だけは別と言えるかもしれません。確かに神レンズsonnar 55mm f1.8がなんとなくカバーしている焦点距離ではある。しかし気になる5mmの差。言い訳のない標準の王者ともいうべきこの数値が、魔術のように我々を虜にします（SIGMAもありますけど）。

SONY Zeissの中でもっともZeissらしいレンズとも言える現代Planarの描写は、まさに魔術的で風格を感じさせます。GMには単焦点の50mmがありませんが、近くである1635GMや2470GM、24GMなどと比較しても、その孤高の独自性には惚れ惚れします。GMが光のエネルギーをありありと捉える生命力のレンズだとすれば、Planarは光が伝導する空気のフィールドを可視化するいわば風のヴェールのようなレンズです。Zeissは解像度よりも光と影のコントラストを重視する、と言葉で言ってしまえば手早いものですが、そのような要約では伝わらない艶というものがあります。

SIGMAやA036を持っていないので、もっぱら24105Gや55Z、それから周辺のGMとの比較になりますが、やはりPlanarは単純に素晴らしい。24105Gとは全く出てくる絵が違います。GMとは甲乙つけがたいですが、初歩的な光を捉える力能としては両者極めて高水準で、EVFの見た目で本当にテンションが上がります。にもかかわらず写りには明確な差があって、Sonnarとの比較では柔らかいと評されるPlanarですが、GMとの比較では引き締まった肉体・表情を描写してくれるように思います。ポートレートレンズとしては、その焦点域から50mmのPlanarと85mmのGMがワンセットになっておりますが、誤解を恐れずに言えば、Planarで写し取られる写真は誰がとっても素晴らしいと思うようなものばかりでした（85GMもハマると素晴らしいですがハズレもよく見られる）。

しかしながら、24105Gを超える778グラムという重さはやはり厳しいものがあって、片手で扱える重量の限界を超えています。ということはSIGMAの50mmは910グラムですから、もう余裕を持ってアウトですね。これと比較するとPlanarはギリギリアウトということになります。ギリギリアウトだけれど、万能の50mmであり、唯一の写りであるからこそこれを持ち歩くという形になります。極めて高度な妥協を強いられます。55Zとの二者択一を迫られた場合、多くの人はノータイムで50Zを選ぶのかもしれないですが、僕はかなり悩みます。悩んだ結果、両方やめて2470GMにしてしまいそうです。二者択一というのは不毛なものです。

私は最近何回か旅行に行く機会がありましたが、一度は利便性を重視して24105Gのみで行きました。便利悪くなかったように思う反面、日々の写りには最終的な不満を持つに至りました。別な旅行には1635GMとPlanar 50でいきました。両方とも素晴らしい写りでした。特に50mmで撮影する海や旅館には圧倒的な艶が宿っていました。1635の描きだす空や山並みも最高で、クロップするとわずかにPlanarに少し劣るけれども、とても高貴な血統の52.5mmの描写が得られました（24105GやSonnarには感じられない艶……）。なおその後別な旅行に2470GMだけで行きました。全域で妖艶かつ高品質な絵が取れ、とても満足しました。１本だけで行くなら、アーティスト気分で行くなら50、利便性重視＋夜を妥協するなら2470という感じでしょう。私の旅行ではどの日程も夜の天気に恵まれなかったため、1.4というF値が最も輝く星景での実践が得られなかったことだけが残念です。

余談ですが、スナップで考えるなら24GMが軽さと明るさと写りの観点から最強ではないかな、と思いました。次の候補が55Zや35F、それから50Zですが、どうしても明るさや重さ、それから写りに妥協した要素が出てきます。私はスナップは通行人や車のような動く被写体を捉えるものだと考えていますから、SSを稼げる明るいレンズが重要で、焦点域は24mm以上55mm以下であればなんとかなると考えている性質です（もちろん35mmくらいが丁度いいことは認めますが）。私は135GMやズームレンズを持ちあるく人なので50Zもスナップ用途に入れていますが、普通に考えたら残念ながらギリギリアウトだと思います。

それでも持ち出してしまう魅力と魔力に満ちたレンズではあるんですよね……。私の中では交換が効かないので、超法規的に星５です。星５をつけたくなるレンズでした。